「老害」経営者が跋扈(ばっこ)してきた企業の決算の不振が続く。それなのに株主は抗議しない。日本の株主は相変わらずお人好しである。
元経団連会長の御手洗冨士夫会長兼CEO(最高経営責任者)が率いるキヤノンは、今期3度目の業績下方修正をした。2016年12月期(通期)の連結純利益は、前期比25%減の1650億円。従来予想の18%減の1800億円から減益幅が広がる。売上高は前期比12%減の3兆3600億円、営業利益は34%減の2350億円になる見通し。業績見通しを引き下げるのは4月、7月に続いて3度目だ。
海外売上高比率が8割と高いことから、円高が大きな痛手となった。しかし、円高だけが業績不振の理由ではない。プリンターやデジタルカメラといった主力製品が、市場の変化の波に呑み込まれたことが苦戦の根本原因だ。
「既存事業の構造改革と戦略の見直しに進展がない」――。アナリストは、このように厳しい見方をする。
新規事業として商業印刷、ネットワーク(監視)カメラ、医療の3分野に注力し、それぞれ大型買収を仕掛けたが、スピード感に乏しい。
商業印刷分野では、10年にオランダのオセを1000億円で買収した。オセはやっと黒字になったところで、収益面での貢献はないに等しい。
監視カメラでは、15年にスウェーデンのアクシスコミュニケーションズを3300億円で買収。今秋、欧米の販売網をアクシス側に一本化したところ。キヤノンの望遠レンズとアクシスのカメラ本体を組み合わせた共同開発商品を初めて発表した。こちらもかなりスローテンポだ。
医療の領域では今年3月、東芝から医療機器子会社の東芝メディカルシステムズを6655億円で買収することが決まり、現在、独占禁止法に基づく審査中。一部の国で審査が手間取っている。
キヤノンはM&A(合併・買収)に1兆1000億円近い巨額の資金を投下したが、新しい事業の育成に時間がかかっている。主力事業に育つのが何年後になるのか、見通しが立たない。
住友化学、コマツも独裁経営者の負の遺産に苦慮
住友化学は、社長、会長を歴任し、現相談役となっている米倉弘昌氏の「負の遺産」に苦しんでいる。17年3月期の業績予想は、当初の計画を下方修正した。連結純利益は前期比26%減の600億円になる見通しで、従来予想を200億円下回る。売上高は7%減の1兆9600億円を見込む。従来予想を700億円下回る。営業利益は27%減の1200億円の見通し。期初予想を14%引き下げた。三菱ケミカルホールディングスに売り上げ、利益両面で大きく見劣りする。