多くの人気女優が愛用、化粧品THREEが世界的ブレイク…国産素材好評で海外市場爆走
「最初の店は伊勢丹でした。現在では、国内は39店、海外は28店、全部がアジアです」
創業7年目のB to C企業としては海外比率が大きい。
「創業した当初から海外展開を考えていました。というより、ニューヨークやロンドンで通用する日本の化粧品ブランドにしよう、と思っていたのです」
石橋社長は世界を目指してきた。
「日本の製品で世界一のものは多い。車がそうだし、電気製品の多くもそうだった。また世界中を歩いてみて、東京が文化的に世界最大の都市だと思います」
しかし、ファッション関係の業界で世界を目指しているのは、石橋社長に言わせるとファーストリテイリングぐらいだという。
「和食ブームに見られるように、日本文化が世界を席巻する時代がやってくると思うんですね」
きっかけはあちらから
とはいえ、ACROの海外進出の歴史は始まったばかりだ。
「12年の春に、トルコのイスタンブールで化粧品に関する世界コンファレンスがあったんですね。そこで私がTHREEを紹介する機会がありました」
THREE製品に共通なシンプルなガラス容器(他社のブランドは樹脂容器)や、国産の植物由来の精油からくる癒される香りなどが高く評価されたという。そのコンファレンスの後、進出を要請する引き合いが世界中から殺到したという。
「でも結局、縁と熱心さが決め手だったんでしょうか」
タイの現代理店が一番熱心で、来日もしてくれたこともあり、石橋社長のバンコク視察を強く要請した、というのである。
「今ではバンコクだけで17のショップを展開してくれています。思いがけなかったことは、タイでの客単価が高い、ということなんですね。なんと日本での客単価の倍の売り上げがあります。というのは、多くのショップがデパートの中にあるのですが、タイではデパートに来るのは富裕層だけというか、収入により買い物をするショップが分かれているのです」
所得水準の平均からいえば高くはないはずの市場で、うまく滑り出せた。
「それから面白いのは、SNSがタイでは日本より進んでいます。その結果、口コミのマーケティング効果が高く、THREEの商品特性にぴったり合致したのです」
アジアから世界へ
「アジアのスピードはものすごいものがあります」
タイでは17年にチェンマイにショップが出るという。
「台湾に代理店を決めたら、いきなり15年に5店舗出してくれました。マレーシアでは16年4月に1号店が出たと思ったら、今では3店舗を運営してくれています。香港では17年の9月にコーズウェイベイのSOGOデパートに出ます」
シンガポールには17年度に出店予定で、18年にはオーチャード通りに3店体制にするという。
「海外では代理店に任せます」
ACROとして直接進出はまだ行っていない、という。また現地製造ではなく、製品輸出モデルだ。
「国産材料、日本文化、そういうものとして受け入れてもらっています」
ただし、中国市場だけは日本からの製品輸出モデルとは制度的に合わないところがあり、見送っているという。
66歳となった創業経営者だが、創業暦は10年にも満たない。THREEの世界展開をどこまで突き詰めていけるのだろうか。大きな可能性が世界に広がっている構造だ。
(文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント)
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