ピルキントン買収後の10年間で最終赤字は6回
経営トップが迷走していては、業績が上向くわけがない。ピルキントンを買収した初年度の07年3月期から16年3月期までの10年間の決算は、無残というほかない。
10回中6回が最終赤字だった。リーマン・ショック後の09年3月期から最終赤字に転落。11年3月期に1度黒字浮上したが、それ以降は再び水面下に沈んだ。15年3月期に4期ぶりに16億円の黒字に転換したが、16年3月期は再び赤字に転落。しかも、最終損益段階で過去最大の498億円の巨額損失を計上した。
累積赤字が膨らみ、その結果、利益剰余金は1315億円の赤字となった。配当は12年3月期を最後に無配だ。この間、リーマン・ショックと欧州債務危機という2つの大きな経済危機が起きたが、これは他社も同じことで、赤字の言い訳にはならない。
日本板硝子は、買収したピルキントンをガバナンス(企業統治)できなかったことが経営悪化の最大の原因だ。
400億円増資も空振りするおそれ
17年3月期の連結決算(国際会計基準)では、売上高が前期比9%減の5700億円、営業利益は60%増の310億円、純利益は50億円の黒字に転換する見込み。事業別では建築用ガラス、自動車用ガラス、地域別では欧州の収益が好転し営業増益となる。
16年同期は、中国で建築用ガラス、ブラジルで自動車用ガラスが、想定したほどの利益を得られず巨額の減損を計上し、498億円の最終赤字に沈んだ。
17年3月期の最終利益は50億円にとどまり、復調したとはいいがたい。業界首位の旭硝子の最終利益は474億円(16年12月期)と断トツ。同3位のセントラル硝子の100億円(17年3月期見込み)にも及ばず、同4位の日本電気硝子の49億円(16年12月期)と同じ利益水準だ。
ピルキントン買収の負の遺産が重くのしかかる。社債・借入金は4275億円(16年12月末)。年間の金融費用は198億円(16年3月期)に上る。
2つのファンドを引受先とする400億円の第三者割当増資で自己資本の充実を図り、金融費用の削減によって収益の改善を目指す。増資で長年悩まされてきたピルキントンの呪いから解き放たれ、経営を立て直すことができるのか。
(文=編集部)