米原発事故の賠償金は141億円
三菱重工は3月14日、米原子力発電所の事故をめぐり、米電力会社の南カリフォルニア・エジソン(SCE)から66億6700万ドル(約7500億円)の損害賠償を請求されていた問題で、仲裁機関の国際商業会議所(ICC)から損害賠償金を1億2500万ドル(約141億円)とする裁定を受けたと発表した。
三菱重工は、契約上の上限は1億3700万ドル(約155億円)と主張。ICCは三菱重工の主張を認め、支払い済みの費用や金利などを調整した金額として1億2500万ドルを提示した。
問題となったのは、カリフォルニア州のサンオノフレ原子力発電所。12年に三菱重工製の蒸気発生器の配管から放射性物資を含んだ水が漏れ、SCEが廃炉を決めていた。
三菱重工はすでに損失を引き当て済みで、17年3月期の業績への影響は軽微とのコメントを出した。
三菱重工の16年4~12月期の連結決算は最終損益が112億円の赤字(前年同期は533億円の黒字)だった。同期間の最終赤字は、04年3月期に四半期決算の公表を始めてから初めて。航空機関連が振るわず採算が大幅に悪化した。
17年3月期通期は、純利益が1000億円という従来予想を据え置いた。前期(638億円の黒字)に多額の特別損失を計上した大型客船事業の損失が減るためだ。
米国の原発事故に絡み米電力会社から7500億円の損害賠償請求を受けていたため、年度内にも出る仲裁の結果次第では大幅な業績の下方修正の可能性があったが、三菱重工の主張がほぼ認められたことで、17年3月期への影響は軽微にとどまる。
売上高は前期比1%減の4兆円、営業利益は22%減の2400億円の見込み。交通・輸送部門が赤字に転落する。同部門のセグメント営業利益は前期の545億円の黒字から250億円の赤字となる。航空機関連では米ボーイングなどの減産に伴い、販売が落ち込んだ。一方で国産初のジェット旅客機MRJ関連費用が膨らんだ。MRJが三菱重工の喉に刺さった骨となっていることがよくわかる。
こうした厳しい環境のなかで、累積赤字が1兆円を超えるアレバに出資する。東芝は米国の原発子会社ウェスチングハウス(WH)の巨額赤字に巻き込まれ、今や存亡の危機に立たされている。三菱重工のアレバへの出資は東芝の二の舞になる懸念が強い。
(文=編集部)