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湯之上隆「電機・半導体業界こぼれ話」

東芝、なぜ世界的に重要なメモリ事業が「叩き売り」…国益を損なう綱川社長の致命的失言

文=湯之上隆/微細加工研究所所長

 Mobileyeは、先進運転支援システム(Advanced Driving Assistant System、ADAS)および自動運転車向けのコンピュータビジョンチップ、アルゴリズムを手掛けるメーカーで、同分野では非常に強力なポジションを得ている。インテルはMobileyeおよびBMWと1年前から自動運転車に関する共同開発を行っており、この分野での覇権確立を狙っていると思われる。

(2)16年7月、ソフトバンクは売上高1791億円の英アームを3.3兆円で買収すると発表した。買収額÷売上高=18.43となる。アームは、プロセッサの設計情報をIP(Intellectual Property)として提供する半導体企業であり、15年にアームのIPを使ったプロセッサは145億個も出荷された。アームには、米クアルコムや台湾メデイアテックなどの設計を専門とする半導体企業(ファブレス)からIP使用料が入ってくる。さらに、アームのIPが使われたプロセッサは、スマートフォン(スマホ)、デジタル家電品、ゲーム、クルマなどに幅広く搭載されるが、アームのプロセッサが1個売れるたびに、同社には約10円の使用料がまるで税金のように入ってくる。

 IoT(モノのインターネット化)の普及やビッグデータ時代を迎えて、20年には300~500億個のネットデバイスにアームのプロセッサが使われ、1兆個に達するセンサのほとんどにもアームのプロセッサが使われると推定されている。ソフトバンクグループの孫正義社長は、その広大な可能性に巨額投資を行ったのである。

(3)16年10月、米クアルコムは、売上高42億ドルのオランダNXPセミコンダクターズを470億ドルで買収すると発表した。買収額÷売上高=11.19となる。

 NXPは、エレクトロニクスメーカーのフリップスの半導体部門が独立した垂直統合型(IDM)の半導体メーカーで、車載用や認証端末用などの半導体が主力であり、15年に旧モトローラの米フリースケール・セミコンダクタを買収し、世界半導体売上高では7位、車載半導体ではルネサスや独インフィニオンを抜いて売上高1位となっている。

 ディープラーニングAIの開発を行っているクアルコムは、NXPを買収することにより、今後世界的な普及が予測される自動運転車用AI半導体において、非常に有力なポジションを得ることができた。そのデファクトスタンダード(事実上の標準)を確立することが狙いである。

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