格安旅行会社、てるみくらぶの倒産劇は衝撃的でした。何が衝撃的かというと、その負債の構造です。具体的には、負債の総額が151億円、そのうち顧客からの代金の前受金が100億円もあったことです。つまり、被害に遭った債権者の大半が、いわゆる仕入れ先や金融機関ではなく「顧客」だったのです。
てるみくらぶの資産状況
てるみくらぶは上場会社ではないので、詳らかな会計情報は開示されていません。本稿においては、報道された「売上195億円、負債総額151億円」という2つのデータをもとに、同社の経営状態を探ってみたいと思います。
まず、てるみくらぶの資本金は6000万円です。負債の総額が150億円だということは、次のような貸借対照表がイメージされます。
ここでは、左側の借方に「資産または損失」と表記しましたが、てるみくらぶの場合、このなかにある「資産」の金額が小さく、「損失」の金額がべらぼうに大きかったことが推測されます。
3月23日までに代金を振り込めば割引という商法の裏
てるみくらぶは倒産の直前段階になって、旅行の募集を行っていますが、3月23日までに入金すると旅行代金が割引されるというものでした。これは同日に期限が到来する国際航空運送協会(IATA)のBSP決済のための資金集めとしか思えません。その金額は4億円程度だったようです。
つまり、てるみくらぶは顧客より100億円も代金を前受しておきながら、4億円程度の決済の資金にも行き詰まっていたことがわかります。そして、同日のIATAのBSP決済の4億円をかき集めるために、「3月23日までに代金を払えば割引」という条件での募集を行っていたのです。
旅行会社というのは、大掛かりな設備投資も不要であり、たな卸資産などの在庫保有も不要なので、資産を保有するといっても、預貯金をたくさん抱えているのが一般的です。てるみくらぶの場合、その預金が4億円もの決済に困るほど底をついているような状況に陥っていました。