半端ではなかった債務超過のレベル
ということは、債務超過のレベルも半端ではないと思われます。かつて上場している会社において、債務超過の末に破たんした会社もありました。
上掲における自己資本比率がマイナスの会社というのは、債務超過にあることを意味します。そのなかでも、そごうの債務超過のレベルは甚だしく、マイナス73.5%にも上っています。これは、負債が100に対して資産が26.5しかないということを示しています。おそらくてるみくらぶは、そごうに匹敵するような(あるいはそれ以上の)大規模な水準での資産の毀損が生じていたに相違ないのです。
繰り返しになりますが、旅行業者というのは大掛かりな設備投資や在庫投資が不要です。
上掲の倒産企業をみると、そごうのほか、「長崎屋」「京樽」「第一家電」のような小売業者の名前がありますが、これらはいずれも小売業者であって、店舗と在庫に相当の資金を投入したうえで、事業を営んでいました。
また、使い捨てライター製造会社、東海などは、製造業を営んでいたので工場設備に相当の資金を投入したうえで事業を営んでいました。これらの業種は、預貯金以外の資産を保有しておく必要があります。ですから、資金不足を生じないように金融機関から借り入れをするなりして資金手当てをする必要があるのです。
いっぽう、てるみくらぶのような旅行業者では、大掛かりな設備投資も在庫投資も不要のうえ、代金は顧客から前受けするので、資金不足に陥るリスクが小さいのです。それが、4億円程度の決済のために直前で割引セールスをして代金の入金を急いだということは、債務超過の状態が尋常でなかったといえるのです。
資金管理の杜撰さ
以上は、倒産直前期におけるてるみくらぶの資産内容に関する分析結果ですが、次に同社の資金管理についてみていきます。
てるみくらぶは、前述のような財務状況に陥りましたが、その直接的な原因は「顧客からの預かり金を代金の決済以外の用途に流用していた」ことです。たとえば、顧客から旅行代金を3万円預かったのであれば、このうち、同社のコミッション(手数料)が5000円で、残りの2万5000円を航空券代や宿泊施設などへの代金として払う必要があるとします。