「社名とブランド名を統一して魅力あるグローバルブランドに成長させる。(社名変更は)これから価値を提供するブランドとして生きる決意表明」(吉永泰之スバル社長)
年間販売台数が100万台を突破し、4月1日に社名を富士重工業から変更したSUBARU(スバル)の動向が注目されている。成長の要だった米国新車市場に変調の兆しが見え始めているのに加え、「米国第一」を掲げるトランプ米政権の政策が不透明だからだ。さらに円高ドル安の為替動向も業績に暗い影を投げかけている。今年6月には重鎮の役員が相次いで経営の第一線から外れることも決まり、ポスト吉永をめぐる動きも活発化している新生スバル。自動車業界で引き続き存在感を打ち出せるのか。
スバルの2016年のグローバル販売台数は前年比3%増の101万2000台と過去最高となり、初めて100万台を突破した。成長はリーマンショック後から一貫して続いてきた。09年のグローバル販売台数が約55万台で、この7年間で約45万台増えたことになる。スバルの高い成長を支えてきたのが米国市場だ。リーマンショック前の07年の米国販売が18万7000台だったのが、16年には61万5000台と45万台近く増えている。17年には67万台にまで伸ばす計画を掲げる。
スバル車は「走り」にこだわり、水平対向エンジンや4輪駆動システムの「AWD」などが特徴のニッチ(すき間)なブランドで、スバル車に乗り続けるユーザーは「スバリスト」と呼ばれるなど、コアなファンが多いことで知られている。マニアックなクルマだけに年間販売台数50万台前後の自動車メーカーだったが、ここ数年の成長で一躍、注目のブランドとなっている。
スバルが注目される理由は、急成長に加えて、利益率の高さにある。国内最大手トヨタ自動車の15年度の売上高営業利益率が10.0%、日産自動車が6.5%、ホンダに至っては3.4%なのに対して、スバルは17.5%と、世界の自動車メーカーのなかでも群を抜いて高い。スバル車ユーザーはこだわりが強く、値引きもある程度抑制できることが理由のひとつだ。
スバルは戦前の航空機メーカーである中島飛行機が前身で、1953年に社名を富士重工業に変更した。中島飛行機の創業から100周年を迎えるのを機に社名変更し、新たな成長を目指すはずだったスバル。しかし、早くも試練を迎えそうだ。
ピークアウト
ひとつが、主力市場でこれまでのスバル成長の要だった米国市場の先行き不透明感が増していることだ。米国の3月の新車販売は前年同月比1.6%減の155万6000台と、3カ月連続マイナスとなった。しかも販売奨励金(インセンティブ)は過去最高レベルに達しているものの、在庫は増えている。米国新車市場は16年まで2年連続で過去最高を更新してきたが、ピークアウトが鮮明になりつつある。