元国税局職員で現在お笑い芸人の「さんきゅう倉田」です。好きな女性のタイプは、「ちゃんと領収証をもらうコ」です。
むかし、まだ消費税が5%だったころ、税務調査に行った際の出来事を紹介します。調査先に選定した会社は、米の卸業を行っている会社です。どんなところに卸しているかというと、みなさんが絶対に知っているような、街中にたくさんある弁当店に卸していました。今でも、そこのお弁当を食べるたびに、卸していた会社の社長の顔を思い出します。
いつものように、準備調査をしてから税務調査に行きました。お米をたくさん卸しているらしく、売上はかなり大きいです。ぼくのような若造がこんな大きな会社と戦えるのでしょうか。
午前10時に相手の会社に臨場し、会議室に通してもらいます。すでに帳簿書類が5年分机に並べられていました。会議室の調度品は、豪奢ではないが安物でもなく、揃えた人のセンスや教養を感じさせます。こういう会社は、帳簿のつけ方も丁寧。ぼくは、今回の税務調査で、不備や不正を見つけるのは難しいのではないかと感じました。
この日、調査に立ち会うのは、社長、経理担当者、税理士、税理士事務所の事務員の4名。4対1の戦いです。かなり不利なように思えます。通常の調査なら、社長との一騎打ち、あるいは社長&税理士コンビとの戦いです。しかし、今回は4対1。
なぜ、4人もいるかというと、それぞれ役割というか、持っている情報が異なるからです。
税理士事務所の事務員は、経理担当者との連絡・調整やデータのやりとり、確定申告書の作成を行っていると思われます。税理士資格を保有していないので、確定申告書の作成は税理士法違反です。税務調査の立会いもできないはずですが、税務の現場では往々にしてあることです。誰も何も言いません。実情を知っている事務員さんがいないと調査が滞るからです。
税理士は、「ちゃんと税理士が確定申告書を作成していますよ」「税務調査にも立ち会っていますよ」という“ポーズ”のためにいます。また、人数が多いほうが調査担当者を圧倒できるので、その点でも同席する意味があります。
経理担当者は、この会社の経理のすべてを知っています。つまり、会社内のカネ、モノ、ヒトの流れを社長と同じかそれ以上に認識しています。決定権はありませんが、情報をたくさん持っていて、不明点・疑問点があれば随時、経理担当者に確認します。