フジテレビの課題は、広告料金の指標となる視聴率を引上げること。若者を中心にテレビ離れが進み、動画配信サービスとの視聴者との奪い合いが続く。
こうしたなか、切った張ったの視聴率競争に挑むトップが、60歳の亀山氏から73歳の宮内氏に交代する。若返りどころか、ひと回り以上も高齢化する
日枝氏は取締役相談役に退くとはいえ、産業経済新聞社などを含めた企業を束ねる「フジサンケイグループ代表」の肩書は残る。グループ代表として、引き続き実権を持つわけだ。新経営体制は“日枝院政”が実態といっていいだろう。
日枝氏は1988年にフジテレビの社長に就任して以来、13年間社長を務め、01年に会長に就いた。日本民間放送連盟(民放連)の会長を務めるなど、放送業界をリードしてきた。08年にフジテレビが持ち株会社に移行後は、フジ・メディアHD会長として君臨してきた。
日枝氏は安倍晋三首相に近い放送人としても有名だ。一時期は、お台場のカジノ建設を推進する仲だった。
4月17日付時事通信『首相動静』によると、安倍首相は東京・銀座の複合商業施設「GINZA SIX(ギンザシックス)」のオープニングセレモニーに出席して、あいさつした。その足で、「6時52分から東京・赤坂の日本料理店『古母里』で、日枝久フジテレビ会長らと食事」と報じられている。
フジ・メディアHDの稼ぎ頭は都市開発事業
民放キー局5社の17年3月期の連結決算を比べてみたい。
※以下、社名、売上高(前期比伸長率)、営業利益(同)、ROE
フジ・メディアHD、6539(2.1)、223(▲8.5)、4.2
日本テレビHD、4167(0.5)、525(▲1.2)、6.6
東京放送HD、3553(2.0)、198(15.7)、3.4
テレビ朝日HD、2958(5.4)、172(4.3)、5.1
テレビ東京HD、1427(4.7)、63(▲12.1)、5.8
(単位:億円、%。ROEは自己資本純利益率。▲はマイナス)
フジ・メディアHDの業績低迷が浮き彫りになっている。本業の儲けを示す営業利益は4期連続の減益となった。売上高では業界トップを走っているものの、営業利益は日本テレビHDの4割強にとどまる。主力のテレビ事業が絶不調であることが大きい。
12年3月期には、フジテレビの営業利益は250億円で全社の営業利益(332億円)の75%を叩き出しており、テレビが稼ぎ頭だった。その後、営業減益が続き、17年3月期の営業利益は40億円で、全社営業利益の18%でしかない。
稼ぎ頭は都市開発事業にとって代わった。同事業の営業利益は16.2%増の109億円で、全社営業利益の49%を占める。いまやフジ・メディアHDの収益は都市開発事業が支えているという構図だ。
フジ・メディアHDの株主総会は例年、視聴率の低迷やROEが5%を割っていることが追及され、怒号が飛び交う。今年も、“シャンシャン総会”とはいきそうにない。
(文=編集部)