フランス大領領に投資銀行出身で39歳のエマニュエル・マクロン氏が就任したことに、ルノー・日産自動車グループが緊張感を高めている。マクロン大統領はルノー・日産のトップであるカルロス・ゴーン氏と少なからず因縁があるためだ。まずはルノーの株主総会における、ゴーン氏の高額報酬に対するフランス政府の動向が注目されそうだ。
「(マクロン氏が大統領に当選して)良かったと思っている。一昨年、フロランジュ法をめぐって議論したが(ルノー・日産の)アライアンスの狙いなどを結果的に理解してもらった」
日産自動車の西川廣人社長は5月11日、決算発表の記者会見で、マクロン大統領がルノー・日産への経営に関与を強めるとの見方を一蹴してみせた。
ルノー・日産とマクロン氏の対立が表面化したのは2015年。フランス政府は14年に株式を2年以上保有する株主の議決権を2倍にできるフロランジュ法を制定した。長期保有株主の議決権を倍増させないためには、株主総会で3分の2以上の株主の賛成が必要だ。当事、フランス政府はルノーに15%出資する大株主。ルノー経営陣は、議決権の倍増で政府が経営に関与することを避けるため、フロランジュ法を適用しないことを株主総会で提案。
これに対してフランス政府は、ルノーへの出資比率を約20%に引き上げて対抗、結果的に経営側の議案は否決されて、ルノーの長期株式保有者の議決権は倍増された。これを主導してきたのが当時、経済・産業・デジタル相だったマクロン氏だ。
マクロン氏は、フランス政府のルノーの議決権を約28%に高めた上で、今度はゴーン氏に業績好調だった日産とルノーの経営統合を迫った。出資関係ではルノーが上に立つものの、業績では日産がルノーを圧倒しており、フランス政府としても雇用政策などで「小粒なルノーより、グローバル展開している日産をうまく活用したいと考えた」(自動車ジャーナリスト)のは明白だ。
ルノーは日産に45%出資しており、日産もルノーに15%出資して持ち合っている。しかし、日産が保有するルノー株式にはフランスの法律によって議決権がない。フランス政府がルノーを通して日産の経営に関与してくれば、これを防ぐ手立てはないに等しい。