塚田農場、業績下降の要因
このように塚田農場は独自のシステムで急成長していったが、そのシステムを真似た居酒屋が次第に台頭したことで収益力に陰りが見え始めた。たとえば、居酒屋大手のモンテローザは12年に地鶏料理を提供する居酒屋「山内農場」を立ち上げ、鹿児島県や大分県で養鶏事業を開始している。現在の店舗数は約190店で塚田農場を上回る。
また、塚田農場は出店を急加速させた結果、人手不足に陥ったことも成長にブレーキをかけた。特に店長と料理長が不足し、16年3月末の店長の充足率は57%に低下し、料理長は47%にまで落ち込んだ。人手不足のため店舗オペレーション力は低下し、サービスの質は低下した。これも収益力の衰えを招いた要因といえるだろう。
さらに、既存店の収益力が衰えたことで人件費などの経費率が上昇し、利益を圧迫するようになった。売上高に占める営業利益の割合は、12年3月期から15年3月期まで3期連続で6%台と高い水準を誇っていたが、16年3月期には2.7%に減少し、17年3月期には1.2%にまで落ち込んだ。
エー・ピーカンパニーは、体力に合わない出店を続けたことで収益力の低下を招いた。今後は出店ペースを抑え、業態変更やリニューアルなどで稼ぐ力を回復させるという。17年3月末の塚田農場の国内店舗数は151店で、前年同期と同じ数に終着した。18年3月期の出店は、鮮魚居酒屋業態店と合わせて7店程度に抑えるという。地方エリアを中心に出店し、利益率を高める考えだ。
同時に人材の育成も進めていく方針だ。店長研修を計画的に実施し、外部講師による応用研修を実施するなどして、店舗の管理力とホールの接客力を高めるという。外部の調理学校と提携し、調理技術の向上も図る。17年3月末の店長の充足率は81%、料理長は77%にまで回復したが、さらなる向上が急務といえる。
塚田農場以外のブランドの成長戦略も描いている。17年3月末時点で24店展開している「四十八漁場」など、鮮魚業態店の確立を図る。卸売市場や卸売り業者を介さず、漁師から直接店舗に鮮魚を届ける「生販直結モデル」を売りに、さらなる拡大を狙う。
加えて、新業態の焼き鳥店の開発も行う。塚田農場から転換するかたちで、低価格帯の焼き鳥店「やきとりスタンダード」などを始めた。焼き鳥業態店は、17年3月末時点で9店と少なく、今後の出店に期待がかかる。ただ、焼き鳥居酒屋の業態は、先行する「鳥貴族」が現在500店以上を展開しており、厳しい競争となることが予想される。出遅れた感は否めない。
一方、海外では出店攻勢を強める。中国やシンガポール、米国に17年3月末時点で15店を展開している。4月にはインドネシアに出店し、今後香港にも出店を予定している。18年3月期では合計5店舗を出店する計画だ。
エー・ピーカンパニーは、塚田農場の国内既存店を立て直し、海外と新業態の新規出店を進めることで再起を狙う。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。