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エイベックス、新社屋売却、経営危機の深刻度合い…松浦会長の年報酬2億円超、赤字拡大

文=編集部
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エイベックス本社ビル(「Wikipedia」より)

 音楽・映像事業を手掛けるエイベックスは初の希望退職者募集の実施に踏み切った。音楽事業の一部や間接部門に在籍する40歳以上を対象に100人程度の希望退職者を募る。募集人員は対象者の2割超に相当する。12月10~21日に募集し、3月末に退職する。

 東京・港区の本社ビルの売却を検討していると報じられた。表参道・青山通り沿いのエイベックスビルである。地上18階、地下2階。高さ101.5m、延べ床面積2万8344平方メートル。2015年に着工し、17年10月に竣工した。総事業費は約143億円だった。

 新築したばかりの“お宝”ともいうべき本社ビルを売却する、というのだ。外資系ファンドを含む複数の会社で入札を実施し、カナダの不動産ファンド、ベントール・グリーンオーク(BGO)が優先交渉権を得たという。

 BGOは欧米の主要都市で高級商業施設や大型物流施設などに積極投資している。日本では東京・銀座の複合商業施設「ギンザシックス」のオフィスフロアを約200億円で取得。武田薬品工業の大阪本社ビルなどの一連の資産を約500億円で取得した実績を持つ大口の買い手だ。BGOのソニー・カルシ社長は米モルガン・スタンレーの不動産部門の幹部を経て独立。派手な活動ぶりが世界的に知られている。BGOは日本市場で、今後2~3年のうちに最大で1兆円を投じる計画。日本の不動産市場は欧米に比べてコロナ禍の打撃が小さく、相対的に高いリターンが見込めると判断しているようだ。

 エイベックスビルは一般的な賃貸オフィスビルと比較して流動性で劣る。不動産関係者によると、坪単価1500万円前後で交渉が進められているようだ。エイベックスは本社ビルを売却後、賃貸して継続して使用することになるとみられている。本社ビルの売却は金融機関が主導した、とされている。

ライブイベントの開催自粛で赤字に転落

 21年3月期上半期(20年4~9月)の連結決算の売上高は前年同期比44.0%減の342億円、営業損益は22億円の赤字(前年同期は6億円の赤字)、最終損益も32億円の赤字(同17億円の赤字)で2期連続の赤字となった。

 新型コロナウイルスの感染拡大防止措置でイベントが軒並み開催できなくなった。従業員に支給した休業補償を損失として計上した結果、最終赤字が膨れた。音楽事業が同社の根幹だが、その売上高は前年同期比58%減の184億円、営業損益は22億円の赤字(前年同期は20億円の赤字)だった。

 かつてCDでミリオンセラーを連発していた頃は、音楽パッケージの売り上げが大きかったが、現在ではライブが稼ぎ頭に変わった。音楽事業の売り上げの4割程度をライブが占めている。しかし、大規模イベントの中止が相次ぎ、20年上半期に164億円あったライブの売り上げが21年上半期には14億円と、前年同期比91%減と壊滅状態となった。

 毎年恒例の大規模ライブイベント「a-nation」をオンラインで開催するなど、有料配信を積極的に活用したため、配信事業の売り上げは55億円から54億円と、3%減にとどまった。だが配信だと物販などに結びつかない。マーチャンダイジング(物販)は40億円から9億円へ76%減った。音楽パッケージは94億円から45%減の52億円に落ち込んだ。

 音楽ライブの中止はファンクラブ事業にも悪影響を及ぼした。ファンクラブ会員になるとアーティストのライブチケットを先行販売で入手できる特権がある。オンライン配信だと会員でなくても視聴できるわけで、ファンクラブを解約する人が増えた。ファンクラブ会員は前年同期比で7.4万人減って82.6万人となった。

 音楽事業に含まれていたEコマースやファンクラブ、チケットサービスはデジタル事業に統合された。デジタル・プラットフォーム事業の21年上半期の売上高は118億円。前年同期の171億円から31%減った。

創業者の松浦勝人会長がCEOを退任

 浜崎あゆみ、倖田來未、小室哲哉など有名アーティストが所属して一世を風靡した。しかし、いまや所属アーティストに往時の勢いはなく、ドル箱だった音楽CDのパッケージ商品も売れなくなっている。こうした構造的な弱点にコロナが追い打ちをかけた。

 6月26日に開催した定時株主総会で松浦勝人会長がCEO(最高経営責任者)職を返上、黒岩克巳社長がCEOに就いた。松浦氏はエイベックスの創業者。18年まで社長CEOを務めた。それ以降もCEOとしてグループを統括してきた。松浦氏はツイッターで「CEOの職を降り、念願であったクリエイティブに専念する」と表明した。コロナ禍で創業以来、最大の危機に直面している最中にトップの座を降りたわけだ。

 初の希望退職者の募集、本社ビルの売却、創業者のCEO退任。エイベックスは未曽有の危機を、どう乗り越えようとしているのか。松浦会長は20年3月期に2億7500万円の役員報酬を受け取っている。同社社員の平均年収は700万円だ。

シンガポールの“物言う株主”が6%弱を保有

 12月に入り、シンガポールのファンド、3D・インベストメント・パートナーズがエイベックス株を5.59%取得していることが明らかになった。「3Dは株主提案などを通じて経営陣に改革を要求するファンド」(兜町筋)とみられている。7月には東芝の株主総会で社外取締役2人の選任を求める株主提案を行ったが、この時は否決されている。

 3Dがエイベックスに対して収益改善に向けた具体策を要求する可能性もあり、新しい波乱要因になるかもしれない。

【続報】

 12月24日に取締役会を開き、本社ビルの売却を正式に決定し、同日発表した。売り先はカナダの不動産ファンド、「BGOで売却金額は700億円以上」とした。当面は本社は移転せず、売却したビルを賃貸に切り替えて使う。21年3月にビルを引き渡す。譲渡益290億円を特別利益として21年3月期連結決算に計上。最終利益は150億円(前期は11億円の赤字)になりそうだという。最終黒字は2年ぶりのことだ。ただ、営業損益は70億円の赤字(前期は40億円の黒字)となる見通し。同日、年間配当を前期実績から71円多い121円とすると公表した。12月に募集した希望退職にはグループ全体の6%に当たる103人が応募したことを同日、発表した、3月末に退職する。

 保有するNexTone(マザーズ上場)株の一部を売却し、20年10~12月期に20億円の特別利益を計上するなど業績の下支えに躍起となっているが、コロナの感染の急拡大、第三波の襲来で先行きは見通せない。

BusinessJournal編集部

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