問題はガバナンスにあり
SGHDと日立物流の経営統合が現実味を帯びてくるにつれて、ガバナンス(企業統治)の問題が、大きなハードルとして立ちはだかる。
佐川急便は“スキャンダルの宝庫”と揶揄されることが多い。
1987年に右翼団体が、自民党総裁選に立候補した故竹下登氏に対して、「日本一金儲けがうまい竹下さんを総理にしましょう」という“ほめ殺し”作戦で街宣を仕掛けた。これは、佐川急便の創業者、故佐川清氏が黒幕だといわれている。佐川氏は新潟県の出身で、同郷の故田中角栄元首相から支援を受けてきた。その恩義のある田中氏に反旗を翻した竹下氏を許せないとして、右翼に街宣を依頼したとされる。
90年代初めの東京佐川急便事件では、故金丸信・元自民党副総裁や故石井進・元稲川会会長の違法なカネの流れが明るみに出て、批判を浴びた。事件の責任を取り、佐川正明氏(清氏の後妻の長男)が退任し、栗和田榮一氏(清氏の先妻の息子、SGHD現会長)が佐川急便の社長に就いた。
2000年代初めには、お家騒動が勃発した。創業者の佐川清氏=旧経営陣と、栗和田氏が対立。旧経営陣は栗和田氏の解任を仕掛けたが、返り討ちにあった。旧経営陣によるクーデターは失敗したことで、佐川清氏の影響力は一掃され、栗和田氏が佐川急便の経営権を掌握した。そして今日まで栗和田体制が続いている。
最近でもスキャンダルが絶えない。
昨年、佐川急便東京営業所の運転手が駐車違反で検挙を逃れるため、知人らを身代わり出頭させる事件を起こした。身代わり出頭は、城北、渋谷、城西、城南、足立、杉並、世田谷用賀、台東の都内各営業所に広がりをみせた。警視庁は3月3日、一連の身代わり出頭事件の検挙者は計106人になったと発表した。
昨年12月には、配達員が荷物を蹴ったり地面にたたきつけたりしている様子が動画でインターネット上に投稿された。ネット通販の利用拡大で宅配便の取扱量は増えたが、ドライバー不足は一層、深刻化している。それが一連の事件の根底にある。
SGHDの難点は財務ではなく、不法を容認してきた組織体質にある。「上場会社にふさわしい経営のあり方を身につける必要がある」との指摘に対し、真摯に耳を傾ける必要がありそうだ。
(文=編集部)