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古びたお城形店舗…名門メガネ店・パリミキの凋落、格安店に押され売上激減&閉店ラッシュ

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
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若年層顧客を格安店に奪われる

 同社は豊富な経営資源を持つが、一方で時代の変化に対応できていない側面も浮かび上がる。

 同社のターゲット層は幅広いため、多様なニーズに対応するフルライン、フルカバレッジ型の店舗を核に展開を進めてきた。そのため、郊外のロードサイド店が多い。お城形の店舗が特徴で、遠くからでも識別することができる。かつてはこのお城がトレードマークとなり、集客に貢献していた。しかし、時代が進むにつれ、昔からあるお城形の店舗は老朽化し、次第に古めかしさの象徴に変わっていった感は否めない。

 一方、JINSなどの格安メガネ店は若者をメインターゲットとし、ショッピングセンターや駅ビルなどを中心に展開を進めてきた。ファッションアイテムとしてコーディネートできる機能的なメガネをSPA方式(製造小売型)で低価格販売したことで、若者を中心に支持を得るようになった。

 三城HDのターゲット層は幅広いものの、若年層は中高年層と比べやや手薄だった。それが、若年層を中心に支持を得た格安メガネ店の台頭によって、さらに手薄になっていった。格安メガネ店に対抗するかたちで、若い世代を対象にした低価格でファッション性重視の「Opt LABEL(オプト・レーベル)」を01年9月から展開しているが、今のところまだ認知度が高いとはいえない。若い世代の顧客獲得は依然として課題となっている。

 出店戦略も大きな影を落としている。メガネだけを買うために、わざわざロードサイドのメガネ店に行く人は少なくなった。モータリゼーションは一巡し、ロードサイドから進む人口の減少によりロードサイドマーケットは飽和している。その反動で、都市部の商業施設などワンストップで買い物を済ませたいと思う人は増えている。そのことがロードサイド店を多く抱える同社に直撃した。

 また、価格帯の問題もある。フルラインの品揃え戦略をとってはいるが、どちらかといえば高価格帯のメガネが多い。格安メガネ店が台頭した90年代後半や00年代初頭の三城HDのメガネ1組の平均単価は、全店ベースで3万8000円程度と非常に高い水準にあった。その後は低下しているものの、それでもまだ3万円を超えている(17年3月期)。家計の支出が、メガネ以外の商品やサービスとも競合する今の時代に、メガネに3万円以上かける消費者は多くはないだろう。

 ここまで見てきたように、三城HDは歴史があり豊富な経営資源を持つ業界トップクラスの企業だ。しかし、過去の成功に安住してきた感は否めない。もちろん、手をこまねいているわけではないのは承知している。不採算店舗の閉鎖や改装を進め、店舗の魅力を高めている。音楽をコンセプトにしたエンターテインメント型の店舗を展開するなど、若い世代の取り込みも進めている。

 ただ、業績回復にはもう少し時間が必要だろう。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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