メガバンクなど大手銀行の収益が、為替の動向によって大きく上下にふれるリスクが高まっている。最大手の三菱UFJフィナンシャル・グループでは、米ドルに対して1円の為替変動が、本業での儲けを示す業務純益に与えるインパクトは55億円。「2円の円高で100億円を超す減益になる」(メガバンク幹部)格好だ。逆に円安にふれればその分増益となるわけだが、「中長期的には円高基調にあり、減収要因となりかねない」(同)と懸念されている。
「銀行の収益構造が自動車会社化しつつあるということでしょう」
メガバンクの幹部は、海外部門の全体に占める割合が高くなっている現状をこう憂慮する。モルガン・スタンレーへの1兆円の出資はじめ海外での買収を積極的に展開する三菱UFJの場合、海外部門収益は全体の4割を超え、収益の約半分は海外が叩き出す。特に海外企業に対して、現地通貨(外貨)建てによる融資に力を入れていることもあり、決算時に円転する際に為替による変動幅が拡大している。
同様に三井住友フィナンシャルグループでは米ドルに対して1円の為替変動で32億円、みずほフィナンシャルグループは17億円も収益が上下する。
「トヨタでは1円の円高で400億円、ホンダでは120億円の収益が吹き飛ぶことに比べればまだましだが、銀行も為替に翻弄されかねないセクター化しつつある。銀行=内需株という見方を変えなければならないだろう」(大手証券幹部)
地銀に浮上する中国・新興国リスク
このように収益が海外部門に依存する割合が高くなっているのは、大手銀行に限ったことではない。金融庁が地銀など地域金融機関の中国・新興国向け与信について注視しているのはその象徴だ。
「国内ではマイナス金利政策で貸し出し収益は大きく圧迫されており、利ざやの縮小が止まらない。その分、海外への融資に活路を見いだそうとしている地域金融機関も少なくない。与信先は日系現地法人向けのみならず、非日系現地法人にも拡大している。また、日本の本社と現地子会社間の親子ローンも目配せする必要があろう」(金融庁関係者)
金融庁では、こうした中国・新興国に拠点を有するメインの大口与信先に関する調査を2月に実施したばかりだ。