連鎖倒産は不可避か
新会社はリコールの債務を引き継がない。では、賠償の責任は誰が負うのだろうか。仮に、新たな破裂事故が起こったら責任問題は宙に浮く。つまり、タカタの民事再生法の申請は問題解決の出発点にすぎないのだ。
業界最大手のオートリブの世界シェアは、ここ数年で35%から50%にまで高まった。「民事再生から半年後、1年後に、タカタ(の新会社)のシェアは確実に落ちていく。その時に、取引先の部品メーカーの経営は厳しくなる」(大手自動車部品メーカーの社長)との不安が高まっている。タカタの連鎖倒産は避けられないとの見方が広まっている。
タカタの株価は「民事再生法申請の準備に入った」との報道を受け、484円から6月22日の終値110円まで77%下落。その後はマネーゲームの様相をみせていたが、26日は終日、売買停止となった。東京証券取引所は同日、整理銘柄に指定した。年初来高値は1月5日の1233円だ。7月27日での上場廃止が決まり、100%減資が確実視されている。7月7日、株価は15円の年初来安値をつけ26円(9円高)で終わった。今後、株価は1ケタ(10円以下)になるだろう。
タカタの普通社債はデフォルト
タカタが過去に発行した普通社債は現在、300億円が残存しているが、全額債務不履行(デフォルト)となる。
タカタは1933年に滋賀県彦根市で繊維メーカーとして創業し、戦時中は落下傘の紐をつくっていたことから、80年代にエアバッグの生産を始めた。創業家二代目の高田重一郎氏が、ホンダの創業者・本田宗一郎氏に直談判してホンダの車にエアバッグを標準装備させたというエピソードが残っている。父親は先見の明があったが、息子は米国議会での証言を忌避し、国内でも公の場に出ることなく逃げ回っていた。民事再生法を申請して記者会見したが、米国で事故が起こってから公式に会見したのは、この日が2度目だ。
タカタは現在、欧米やアジアなど20カ国に拠点を持ち、従業員数は4万6000人。エアバッグの世界シェアは20%に上る。
創業者は高田武三氏、二代目が高田重一郎氏。重一郎氏がタカタの基礎を築いた。そして三代目が現社長の重久氏だ。
タカタからエアバッグの供給を受けていたトヨタ自動車は6月26日、タカタに請求すべきリコール費用が5700億円に上ることを明らかにした。大部分が回収不能になる可能性が高いが、すでに引当金を計上しており、業績への影響は軽微という。
トヨタの一連のリコールは、世界で2700万台が対象となり、費用を立て替えて部品の交換などを進めている。
ホンダは同日、16年3月期まで2年間の立て替え費用が5560億円に上ることを明らかにした。「大部分が回収困難になる見込み」とみているが、こちらもすでに引当金を計上しているため決算への影響は限定的とみられる。
(文=編集部)