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東芝、以前から子会社の巨額損失を把握か…監査法人が決算承認できない「知られざる理由」

文=深笛義也/ライター
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 東芝は、重電と軽電の両方を手がけている。原子力、火力、水力、自然エネルギーなどによる発電などが重電、家庭用電気製品などが軽電である。

「かつての芝浦製作所が重電。東京電気が軽電。これが合併して東京芝浦電気となり、東芝となっていくわけですが、重電と軽電の権力争いっていうのが、ずっと流れとしてありました。1990年代に入ってからも家電営業(軽電)出身の西室泰三氏、社会インフラ(重電)出身の岡村正氏、パソコン(軽電)出身の西田厚聰氏と重電と軽電のたすき掛け人事が続くわけです。しかし重電の中核事業である原発建設は反対運動などの高まりで停滞し、成長産業から安定産業になってしまい、重電の人たちの影響力が低下した。原発事業の活路を海外に向けることで重電の人たちが自分たちの復権をかけるという思いが、WH買収の背景にはあると思います」

ライバル・日立との根本的な違い

 東芝が製造してきた原発は、沸騰水型炉(BWR)。WHは加圧水型炉(PWR)である。その背景についても、同書には詳述されている。

「WHの加圧水型が世界の潮流で、東芝はそのままでは世界に打って出ていけなかった。経済産業省は『原子力立国計画』として官民一体となって、原発輸出を推奨する国策を出していたので、その後押しもありました。アメリカでは1979年のスリーマイル島原発事故後、原発の新規発注が途絶えていましたが、ブッシュ政権が05年に原発の新設計画を盛り込んだエネルギー政策法をつくりました。世界でも原発をもう一度稼働させようという『原子力ルネサンス』と呼ばれる動きが出てきていて、それに乗っかろうという思惑も東芝にはあったわけです」

 中国で4基の原発建設の受注を受けるなど、買収の効果はすぐに現れたが、東日本大震災で世界は再び原発建設に慎重になり、WHの価値はなくなってしまった。“再生”を謳っている東芝だが、それは可能なのだろうか。

「東芝のライバルは日立製作所ですが、経営に対する考えが根本から違います。危機に陥っても、日立は早い段階で経営を立て直す。日立というのは純粋に合理的な経営というのを考えてやっている。原発もやっているけれども、いの一番に規模を縮小して、自分たちの強い事業にフォーカスしながら経営を立て直していくということを、きちんとやっていける会社です。

 それに対して東芝というのは、“親方・日の丸”の体質があって、経団連の会長の座を虎視眈々と狙っていたりして、財界というものに執着している。どちらかというと経営よりもそういうところに関心を持っている人がたくさんいて、その歪みというのがどこかに出ている。日立というのは、経団連の副会長はやるけど、会長はやらない。そういう依頼が来ても、断るくらいの会社です。東芝は延々とWHに振り回されたあげく、収益源であった東芝メディカルシステムズを売却して、今、唯一の成長エンジンである東芝メモリの売却を進めている。自分の手脚を食って生き延びようとしているようなものです。そんなことをするくらいなら、一度法的整理をして、ゼロベースから立て直すべきです」

 東芝崩壊の衝撃が日本経済を直撃する日は来るのだろうか。
(文=深笛義也/ライター)

『東芝崩壊 19万人の巨艦企業を沈めた真犯人』 長らく日本を代表する企業であった東芝。しかし、ここに来て数多くの失態が明らかになっています。 前代未聞の決算発表“ドタキャン"をはじめ、依然として粉飾体質が続く、企業としてもはや末期的な状況です。 本書では、グループ従業員数19万人を超えていた巨艦企業の東芝が、2015年に不正会計が発覚してから 債務超過に転落したその真相に迫ります。歴代社長の暴走の果てに解体に至る道のり、そして、“虎の子" である半導体事業を扱う東芝メモリの売却にも手をつけるなど、「解体」待ったなしの東芝は今後どうなっていくのか。 戦前から続く東芝の企業体質、権力構造、それらによってもたらされたウェスチングハウス買収の裏側などを 解明しながら、19万人の巨艦企業を沈めた真犯人に迫ります。 amazon_associate_logo.jpg

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