利益を生まない新規事業をいつまで続けることができるか
三菱重工は、MRJの度重なる納期遅れで、予想を超える開発資金がかかったため、不動産事業を手掛ける非上場の完全子会社・菱重プロパティーズを西日本旅客鉄道(JR西日本)に売却した。売却額は970億円。
17年1月1日付で、三菱重工の完全子会社の菱重ファシリティー&プロパティーズから不動産事業の一部を会社分割方式で菱重プロパティーズに移した。2月1日付で同社の株式の7割をJR西日本が取得。三菱重工は3割を保有するかたちになった。
JR西日本が買収する不動産事業は、首都圏や近畿などで賃貸住宅やオフィスなど400物件を保有している。16年3月期の売上高は250億円、営業利益は40億円だった。
三菱重工の17年3月期の売上高は前期比3%減の3兆9140億円、本業の儲けを示す営業利益は同51%減の1505億円と半減した。量産開始時期を2年先送りし、5度目の納期延期に至ったMRJの開発費用が膨らんだためだ。
三菱重工が6月22日に開いた株主総会では、MRJに関する質問が相次いだ。
宮永社長は「航空宇宙産業は伸びていく分野」と説明。さらに「日本で生産した機体が世界中に飛んでいける。今の経験は若手エンジニアの血と肉となる。(完成機の生産は)日本全体の宝になる」と強調し、株主に理解を求めた。
三菱重工の経営陣が、MRJは日本の航空機産業の復活を託された国策プロジェクトと考えていることがよくわかる発言だ。MRJが収益に貢献するのは、はるか先のことになる。早急に利益を生むことはあきらめているといえる。
だが、利益を生まない新規事業に巨額な投資を続けることに、株主はいつまでも寛容ではいられない。大型客船事業は、累計2500億円超の特別損失を計上して撤退した。MRJ事業も大型客船事業の二の舞になる可能性は否定できない。
MRJから撤退する時、スリーダイヤの威信は地に墜ち、三菱重工は普通の会社になる。
(文=編集部)