リコールが増えれば1兆5000億円の追加費用
タカタには火種が残る。これまでタカタ製エアバッグは日米を中心に世界で約1億個がリコール対象になっている。いずれも経年劣化を防ぐための乾燥剤を含まない製品だった。乾燥剤を含むエアバッグではこれまで不具合は報告されておらず、製造ミスのあった一部を除きリコールは実施されていない。
ただ、タカタはNHTSA(米運輸省道路安全局)から19年末までに乾燥剤入りエアバッグの安全性を証明するよう求められている。乾燥剤入りエアバッグの累計生産台数は約1億個ある。NHTSAは安全性を証明できなければ追加リコールを求める方針だ。そうなれば、リコール対象数は従来の1億個から2億個に倍増する。乾燥剤を含むエアバッグがすべてリコールの対象になった場合、1兆5000億円近い交換費用が新たに発生すると予測されている。
オーストラリアのニューサウスウェールズ州警察は、7月13日にシドニー西部で発生した交通死亡事故に関し、タカタ製エアバッグ破裂が原因とみられると発表した。ロイター通信はタカタのエアバッグを採用した車での死者は18人になったと伝えた。
タカタはKSSと正式契約を締結後、再生計画案を11月27日までに東京地裁に提出することになっている。12月ごろ債権者集会で同案の可否を採決。承認されれば18年1~3月にも事業買収手続きを完了させる計画だ。事業譲渡した後のタカタには欠陥エアバッグに関する債務などが残り、その弁済を担う。
欠陥エアバッグのリコール問題で迷走を続けてきたタカタ創業家の三代目、高田重久会長兼社長はリーダーの器ではなかった。
リーダーの要件を2つだけ挙げるとすれば、ひとつは危機を予感して修羅場に強いこと。もうひとつは、トップの意思を自分の言葉で伝えること。高田氏は、この2つの資質を備えていなかった。
民事再生法の申請を受けて行われた記者会見で、高田氏は言い訳に終始し、この事態になっても「(異常破裂が)なぜ起きたのか不可解だ」「当時の試験では予見不可能だった」と述べた。
KSSとの事業譲渡交渉、自動車メーカーとのリコール費用の減額交渉、債権者との弁済交渉。その重圧が、今後とも高田氏の肩にのしかかる。
(文=編集部)