メガ・ドンキは「GMSの再生モデル」
GMS業界は、退潮が叫ばれて久しい。ユニーに限らず、イオンやセブン&アイ・ホールディングス(HD)などもGMSで苦しんでいる。そうしたなか、各社が力を入れているのは食品だ。一例だが、セブン&アイHDは傘下の西武所沢店で衣料売り場を縮小し、ニーズの高い食品売り場を1フロアから2フロアに拡大したところ、客数と売上高が前年を大きく上回るようになった。このように、GMSの立て直しには食品の充実が欠かせないだろう。
以前のドンキは、食品に強いとはいえなかった。圧縮陳列や手書きPOP、24時間営業によるナイトマーケットの開拓、インバウンド市場への対応などで若者を中心としたドンキ特有の顧客層を開拓してきたこともあり、食品が手薄でも問題がなかったからだ。
だが、若者中心でも成長し続けてきたドンキが、貪欲に若者以外の層も取り込みにかかった。08年に誕生したメガ・ドンキを「ファミリー型総合ディスカウントストア」と位置づけ、若者はもちろん主婦や子供連れのファミリー、中高年層を取り込むことに成功した。そういった層を取り込むには食品の充実が不可欠だ。そのため、ドンキは食品に力を入れていったのだ。
メガ・ドンキは「GMSの再生モデル」と位置づけられている。得意分野ではなかった食品に力を入れ、高まっているニーズに対応するようにしていった。その歴史は長いとはいえないが、メガ・ドンキ渋谷店を訪れてみて、その完成度の高さから競合に勝るとも劣らないレベルに達していると感じた。ユニー・ファミマHDがドンキHDの力を借りたいというのも頷ける。
海外に目を向けるとドンキHDは6月、米国ハワイ州に24店の食品スーパーを展開する企業を買収すると発表した。ドンキHDは、ハワイ州に拠点を置くダイエーの子会社を06年に買収したり、北米やハワイに食品スーパーを展開する企業を13年に買収するなど、米国でスーパー事業を推し進めている。こうした経緯もあり、海外でも食品分野に磨きをかけてきたといえるだろう。
いずれにしても、将来性のある食品分野で力をつけて消費者の胃袋をもつかんだドンキHDは、これからも成長を続けていくだろう。進化していくその姿から目が離せない。
(文=佐藤昌司/店舗経営 コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。