大手監査法人は中堅・中小企業の監査から逃げていく
ほかにも、上場企業と監査法人の関係が壊れてきており、監査法人の交代が相次いでいる。背景には東芝の不正会計問題がある。東芝の監査を担当した新日本監査法人は、不正を見抜けなかったことで信頼を失った。
公的資金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、新日本に対し35億円の損害賠償を求める訴訟を起こした。日本会計士協会は今年7月、新日本の会員権を2カ月間、一時停止した。
この間、監査法人を新日本から変更する上場企業が相次いだ。たとえば、富士フイルムホールディングスは新日本からあずさ監査法人に変更した。
そんななかで最近、特に顕著なのは、大手から中小の監査法人に変更するケースだ。アピックヤマダがトーマツから興亜監査法人に変更に変更したのが典型例だ。
大手監査法人が中堅・中小の監査を敬遠するのは「実入りの少ない割にリスクが大きい」からだ。監査の厳格化は監査コストの増加につながり、監査報酬に跳ね返る。大手監査法人としては、最低でも1億円の監査報酬が欲しいところだが、1億円の監査報酬を払える中堅・中小企業は少ない。
アピックヤマダが17年3月期にトーマツに払った監査報酬額は3340万円で、不正会計が発覚するかもしれないリスクの割に報酬は低い。トーマツが監査契約を打ち切った理由のひとつとみられている。
アピックヤマダは決算発表を延期して監査法人が交代したが、株価は逆に上昇した。監査法人の突然の変更は、株式市場では悪材料と見なされ株価が下落するのが常だが、アピックヤマダは違った。
7月31日、3カ月遅れで発表した18年3月期の業績予想では、売上高は前期比26%増の140億円、営業利益は2.3倍の9億円、純利益は2.2倍の7億円の見通し。旺盛な半導体需要を映して、ウエハーレベルパッケージ(最小単位の半導体パッケージ)向けなどの半導体後工程装置の受注が拡大しているという。
今期の決算見通しが好感され株価は急騰し、8月18日に662円の年初来高値をつけた。年初来安値(325円、1月16日)の2倍だ。
第三者委が指摘した“コンプライアンスの改善”が今後の大きな課題となる。
(文=編集部)