日産自動車の国内生産拠点で、無資格者が完成車の検査を行っていたことが発覚した。日産は軽自動車を除く在庫車約6万台の納車手続きを一時停止するとともに、不正な検査を受けた車両121万台のリコール(回収・無償修理)を実施する方針を示している。
販売を停止した車両には、10月2日に満を持して投入する電気自動車(EV)の新型「リーフ」も含まれている。国内販売が回復基調にあった日産車のブランドイメージの失墜は避けられそうにない。燃費不正が発覚し、日産の指導で経営再建を進めている三菱自動車の社員の心境も複雑だ。
納車が遅れる可能性
道路運送車両法に基づく型式指定制度では、国が行う新規検査を代行するかたちで、自動車メーカーの資格を持つ社員が1台ごと完成検査し、これにパスした車両は車検場に車両を持ち込まなくてもナンバープレートを装着して一般公道を走行できる。自動車メーカーは完成検査できる資格を定めており、研修などを受けた社員にその資格を与える。
国土交通省が9月18日に日産車体の湘南工場に抜き打ちで立ち入り検査を実施したところ、完成車検査の資格を持たない社員が完成車検査の一部を実施していたことが発覚した。日産は国土交通省の指摘を受けて9月19~20日にかけて調査、国内販売車両を生産している日産の追浜工場、栃木工場、日産自動車九州、日産車体の湘南工場と京都工場、日産車体九州のすべての工場で無資格者が完成車検査を実施していたことが明らかになった。
日産は9月20日までに資格を持つ社員が完成車検査を実施するよう対策を実施したが、無資格者が検査した可能性のある在庫車21車種、約6万台の販売を停止して完成車検査をやり直す。このため、今後顧客への納車が遅れる可能性がある。
今後、大きな問題となりそうなのが、無資格者が検査した販売済み車両の対応だ。日産は無資格者による完成車検査がいつから始まったのか、現状では把握しきれていない。恒常的に行っていた可能性もあり、その場合の対応は難しい。日産では初回車検にパスした段階で国の規定に基づく検査をクリアしたことになるため、初回車検を受けていない日産車をリコールして完成車検査を行うことを検討している。リコール台数は121万台となり、約250億円のコスト負担が発生すると発表している。国土交通省では日産に不適切な完成検査と関係する交通事故の発生の有無などを調べて報告することを求めている。