ところが、店舗の大量閉鎖、赤字転落の発表で一転、株価は急落。11月10日には一時、前日比137円(6.6%)安の1934円まで下げ、終値は91円安の1980円。続く週明けの13日も前日比144円(7.3%)安の1836円で引けた。安値は1830円。ステーキ店進出の好材料は帳消しとなった。
幸楽苑HDはなぜ、ステーキのファストフード店に進出するのか。理由ははっきりしている。低価格ラーメンのライバルである「中華食堂日高屋」を展開するハイデイ日高に売上高で抜かれたため、巻き返し策を立てるのが急務だからだ。ハイデイ日高は、埼玉県大宮市(現さいたま市)が発祥で、首都圏の駅前に出店している。
幸楽苑HDとハイデイ日高の売り上げが逆転
17年決算で幸楽苑HDとハイデイ日高は明暗を分けた。
幸楽苑HDの17年3月期の連結決算の売上高は前期比1%減の378億円、営業利益は83%減の1.4億円、純利益は16%増の1.5億円だった。
他方、ハイデイ日高の17年2月期の単独決算の売上高は5%増の385億円、営業利益は5%増の45億円、純利益は6%増の29億円。連続最高純益を更新した。
ハイデイ日高は売上高で初めて幸楽苑HDを上回り、本業の儲けを示す営業利益は32倍の大差をつけた。簡単なつまみを食べながらひとりで酒を飲む「ちょい飲み」が増え、単価の高い酒類の販売が伸びた。
今期はさらに業績格差が広がる。ハイデイ日高の18年2月期の単独決算の売上高は前期比4%増の400億円、営業利益は3%増の47億円、税引き後利益が1%増の29億円と増収増益の見込みだ。営業利益率は11.7%と、きちんと稼いでいる。
幸楽苑HDが逆転を許した原因は、16年10月に発覚した“異物”混入問題だ。静岡市内の店のパート従業員の女性がチャーシューの仕込み作業をしている際に左手親指の一部を誤って切断し、それがチャーシューの保管容器に3日間、入ったままになっていた。
保健所への報告が遅れたことや、問題の特異性から報道が過熱。消費者の反応は厳しかった。このため16年10~12月の売り上げと客数は1割以上落ち込んだ。これでハイデイ日高の後塵を拝することになった。