アマゾンやゾゾタウンに客を奪われている?
インターネット通販の台頭が業績の鈍化につながっているという側面もある。経済産業省によると、衣料品分野の国内ネット通販市場は16年に前年比10.5%増の1兆5297億円、ネット通販販売の割合は1.9ポイント増の10.9%に増えている。アマゾンやゾゾタウンが代表的だが、そういったネット通販事業者が成長し、ユニクロから客を奪っているのだ。
では、ユニクロがネット通販事業者を介して商品を販売していく可能性はあるだろうか。柳井正会長兼社長は、10月24日に米ニューヨークで開いた会見で「米アマゾン・ドット・コムのインターネット通販サイトには出店しない」方針を表明した。自社サイトがあるため、アマゾンなどのプラットフォーマーに出店する必要がなく、また味方にはなり得ないというところだろう。先の表明は宣戦布告と捉えることもできそうだ。
ユニクロとアマゾンは共存が難しい。アマゾンが衣料品のPBを立ち上げ、品ぞろえを強化しているからだ。女性向け衣料「Lark & Ro」、男性向けシャツ「Buttoned Down」、子供向け衣料「Scout + Ro」などを展開している。価格帯はユニクロよりやや高いが、ベーシックな商品が多いという点でユニクロと競合する。ユニクロとしては、かかるコストなどを考えると、アマゾンに出店してもそれほど大きなメリットを享受できないといえる。
アマゾンによる衣料品店の駆逐が近年、米国で顕著だ。衣料品チェーンのギャップは9月に、今後3年間で傘下の「GAP」と「バナナ・リパブリック」の店舗を約200店閉鎖すると発表した。女性用衣料のザ・リミテッドは1月に経営破綻し全250店を閉めた。若者向け衣料のアバクロンビー・アンド・フィッチは業績不振のため身売りを模索していたが7月に断念し、自主再建の道を探っている。いずれもアマゾンの影響が一因となっている。ユニクロとしては、対岸の火事として見過ごすことができない事態だろう。
衣料品通販サイト「ゾゾタウン」のPBも大きな脅威となりそうだ。運営会社のスタートトゥデイは10月30日、衣料品のPBを年内に発売すると発表した。前澤友作社長はPBについて「超ベーシックアイテム」「最高品質をバリュープライスで提供する」「数年内にゾゾタウンの事業規模を超えるスケール」と述べている。PBではファッション性商品を扱わない方針だという。出店するブランドと競合してしまうためだ。ベーシックアイテムであれば、ゾゾタウン上では競合はほとんどない。