冬が始まる11月、ユニクロの大人気アウター「ウルトラライトダウンジャケット」が重宝する季節となったが、20代女性たちから、これを着る中年男性が「ダサい」と不評を買っているそうだ。
ユニクロを展開するファーストリテイリングが発表したデータによれば、ユニクロの9月売上(既存店)は前年同月比に比べ6.3%増え、客数も3.9%増加しているという。今や冬の必需品となりつつある「ヒートテック」や、「ウルトラライトダウン」を買い求める消費者も好調の一因だったのかもしれない。
安定の人気を博している「ウルトラライト」だが、なぜ若い女性から「ダサい」という批判的な意見が上がっているのだろうか。
ダサいと批判する20代女性たちの声
ここで、“ウルトラライトダウンおじさん”に対する20代女性の声をいくつか紹介しよう。
「ダボッとだらしなく着こなしているおじさんが多いから、ダサファッションの象徴みたいになってる」(24歳女性)
「小太りのおじさんとか、頭髪が薄くなってるおじさんとかが好んで着ているイメージ。あと、正直、着ているおじさんたちの多くは所得が低そうな人ばかりだから、どうしてもオシャレに見えない」(28歳女性)
「確かにダウンジャケットは暖かいですけど、正直ちょっと手抜きファッションの印象があるんですよね。『もっとしっかりした格好ができるんじゃない?』って思ってしまいます」(22歳女性)
「『一緒に歩けるか?』って聞かれたら無理ですね。でも、服装なんて個人の自由なので人に迷惑がかからないのなら、なんでもいいんじゃないのかな」(24歳女性)
確かに、厳しい声が多いようだ。
ユニクロはイケメンが着ないとオシャレにならない?
こういった若い女性たちの意見を受け、「ウルトラライトダウン」を着る中年男性がどうしてダサく見えてしまうのか、元メンズファッション誌編集長に話を聞いた。
「そもそもユニクロというのは、ファッション性よりも機能性を重視しているブランドです。よくも悪くも最新のトレンドは無視して、ベーシックなデザインに徹しているのがユニクロなのです。最近はあまり安いイメージはないかもしれませんが、使用している素材や機能性の高さから考えるとコストパフォーマンスの高い服ばかりで、中堅クラスのブランド服と同等のクオリティーのものを、リーズナブルに提供しているのは間違いありません。
ただ、そのようにリーズナブルに提供するために、ひとつのアイテムを大量生産する必要があります。そして、その大量生産した服を売りさばくためには、オシャレな人もダサい人も買おうと思うような、“最大公約数”のベーシックなデザインにする必要があるのです。どのアイテムも決してダサいわけではないのですが、ベーシックなデザインの服はそもそも着こなすのが難しく、もともとのルックスのよさや高いファッションセンスがなければ、なかなかオシャレに着こなせないもの。
ユニクロのCMなどに起用されているのは、外国人モデルであったり、日本人でもスタイルがいい人がほとんどですよね。そういった方々が着るからユニクロの服はかっこよく引き立つわけです。要するに『ウルトラライトダウン』に限らずユニクロの服は、オシャレはオシャレですが、それはイケメンが着たときに限るともいえます」
この話を裏付けるように、「ウルトラライトダウンジャケット」は防寒性に優れた質のよいダウンフェザーを使用しており、折りたたんだ際にもがさばらないようなこだわり設計となっていながら、5990円(税別)とお手頃価格。このリーズナブルさで提供できているのは、ベーシックデザインでいくことに割り切っているからということか。
ユニクロ第一次ブームの立役者、“ダサいフリース”の再来
ではなぜ、「ウルトラライトダウン」だけが「ダサいおじさん」の代名詞のように叩かれてしまうのだろうか。
「一言でいえば、優れたアイテムで非常に人気だから、それゆえに叩かれているということです。ユニクロの第一次ブームの起爆剤となっていた『フリースジャケット』は、1998年の発売からわずか2年間で、約800万着が売れた大ヒット商品でした。それだけ売れたということは、あまりファッションに興味のないダサいおじさんたちも買い求めていたということでもあり、そんな人々がユニクロのフリースを着て街中に溢れかえっていたわけです。
その後、ユニクロブームが一時期衰退し、『ユニクロ=ダサい』というイメージがついてしまっていましたが、その当時のダサいユニクロの代名詞的に扱われていたのがフリースでした。しかし、ユニクロのフリースが特別ダサいわけではなく、昔も今もベーシックなデザインを貫いているだけなのです。
つまり、ユニクロのフリースがダサいわけではなく、ダサい人たちもこぞってユニクロのフリースを着ていたため、ダサい服代表のように扱われてしまっていたということです。
ご存知の通り、『ウルトラライトダウン』は当時のフリースほどのメガヒット商品ではないにしろ、大人気となっている商品です。軽くて着心地がよく、それでいて保温性もばっちり、そしてリーズナブルな価格設定。これだけコストパフォーマンスがいい商品ですから、オシャレ度外視のおじさんたちが重宝するのも納得でしょう」(同)
高品質の服をリーズナブルに提供するために、トレンド性を切り捨ててベーシックデザインに徹した弊害といえるのかもしれない。
ダサく見せずに着る方法、サイズ感という概念を身に付けること
しかし、それではイケメンでもなくスタイルもよくない普通の中年男性は、「ウルトラライトダウン」をオシャレに着ることはできないのだろうか。
「ルックスが特段よい中年男性でない限り、確かに“オシャレに着こなす”ことはなかなか難しいかもしれません。ただ、“ダサく見せずに着こなす”ことはできます。年齢・男女問わず、ダサく見えてしまうのは、サイズ感という概念がない人がほとんど。自分にぴったりのサイズというのを気にせず、大きめの服をだらしなくダボッと着てしまっていたりするのです。
ファッションにおいて、“大は小を兼ねる”ことはありません。着やすさやラクさを重視して、“ちょっと小さいぐらいならちょっと大きいぐらいの服を買う”という中年男性は多いかもしれませんが、それが間違いなのです。ちょっと小さいぐらいの服のほうがタイトなサイジングで着こなすことができますので、例えば今まではLサイズの『ウルトラライトダウン』をダボッと着ていた人ならば、Mサイズを着てみるだけで印象がすっきりし、ダサく見えなくなることもあるでしょう。
また、『ウルトラライトダウン』はLサイズのままがいいというならば、パンツ(ズボン)のサイズ感に気を付けましょう。脚のシルエットがきれいに見えるような、伸縮性のあるストレッチの効いたパンツをタイトサイジングで穿けば、上半身はボリュームがある分、下半身でシュッと引き締められるので、“あえてメリハリをつけているコーディネート”としてダサく見えにくくなるはずです。
いずれにしても、上半身も下半身もダボダボさせていると、確実にダサく見えてしまいますので、上下どちらかはタイトに着こなすことを心掛けましょう」(同)
冬に重宝するこの高コスパアイテムを着てダサいといわれないようにするには、ちょっとした一工夫が必要なようだ。
(文=増田理穂子、昌谷大介/A4studio)