しかし、公正取引委員会のホームページには、これらの事情が存在する事案において、独禁法違反を認めて排除措置命令が出された例が掲載されているという。
「同命令が出された事案は、ソーシャルゲーム提供等の事業を行う株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)が、競争関係に立つグリー株式会社の運営するサイト『GREE』を通じてソーシャルゲームを提供した事業者については、DeNA が運営するサイト『モバゲータウン』(当時のサイト名)内においてゲーム提供のためのリンクを掲載しない、という措置を取ったことが問題とされたものです。
結論として、DeNA の当該行為は『GREEを通じたソーシャルゲームの提供の妨害にあたる』と判断されました。当該事案においても、問題とされた行為はDeNAの自社運営サイト上での提供業者の選別の結果であり、また、命令当時ソーシャルゲーム提供サイトは『モバゲータウン』以外にも多数存在していたと考えられます。つまり、それらの事情をもって『競争者に対する取引妨害』の該当性を否定するのは難しいと考えられます。
もっとも、『競争者に対する取引妨害』が成立するためには、当該行為が『不当に』行われることが必要です。ここで検討されるべきが、今回の商品掲載中止が『amazon.co.jp』の利用規約上、アマゾンが任意に指定できる販売禁止商品に指定されたことを受けて行われたということです。
この点、独禁法のような競争政策上の観点から設けられた規制に対し、規約(事業者間の合意)の存在を盾に規制を逃れることはできないものと考えられますが、販売禁止の理由として、サイト利用者への被害発生の防止等なんらかの正当な理由があるのであれば、アマゾンの行為は『不当に』行われたものとはいえないと判断される可能性はあります。
禁止指定の理由について、いまだアマゾンから回答はないとのことですが、実際に『競争者に対する取引妨害』の該当性が問題となった際には、この点について回答せざるを得なくなるのではないでしょうか」(同)
「顧客第一」を掲げるアマゾンの回答が待たれるところだ。
(文=編集部 協力=児玉政己/弁護士法人ALG&Associates弁護士)