「三菱の名をなぜ汚すのか」と怒り心頭なのは、同グループの社長会「三菱金曜会」の会員企業幹部。矛先が向けられているのは、子会社で製品の検査データ改ざんが明らかになった三菱マテリアルに対してだ。
同社が三菱電線工業、三菱伸銅、三菱アルミニウムの子会社3社の不正を発表したのは11月23日のこと。翌24日には竹内章社長らによる記者会見が開かれたが、記者の質問に「調査中」と何度も繰り返し、具体的内容についてはほとんど語られなかった。心ここにあらずの竹内社長に対し、記者の間からは「まるで他人事」といった声が洩れた。
本丸は三菱アルミニウム
「三菱マテリアルの竹内社長らは一刻も早く、一連の不祥事の幕引きを図ろうとしているのがミエミエ。だが、小手先で乗り切れるほど、甘くはない。いずれにしても、本丸は三菱電線工業ではなく、三菱マテリアル本体および三菱アルミニウムなんです。この2社の問題が白日の下にさらされ、しっかりした善後策が出てこない限り、世間はもとより、金曜会の中でも納得は得られない」
こう話すのは、前出の金曜会の会員企業幹部だ。同じ三菱グループとはいえ、なぜ他社のことに、ここまで厳しい言葉を投げかけるのか。金曜会というのがもともと、そういう組織だからだ。
毎月第2金曜日の昼に各社のトップが集まり、ランチを食べ、招聘した講師の話を聞く。これだけなら単なる親睦会だが、会員企業に問題が起こった時は、対策を話し合う場に変貌する。金曜会の本当の目的は、戦後解体された旧三菱財閥の結束と興隆なのである。三菱マテリアルは金曜会の主要メンバーであり、三菱アルミニウムも同メンバーとして名を列ねている。この2社の不祥事を「金曜会としては見て見ぬふりはできない」(会員企業幹部)というのだ。
「御三家」に次ぐ名門企業
三菱グループの最高意思決定機関としての側面も持つ金曜会。現在、会員企業数は28社だが、これらは横並びではない。そこには厳然としたヒエラルキーが存在する。頂点に君臨するのは「御三家」と呼ばれる三菱重工業、三菱商事、三菱東京UFJ銀行。重大な課題に直面した時は常に、この3社で取り仕切ってきた。