高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏
船橋市、コーヒータウン化計画が本格始動
退院後もおいしいコーヒーを淹れることを追究し、その思いが募り、翌年にIT企業を退職して茨城県の人気店「コーヒーファクトリー」に入社。接客をしながらコーヒーの研鑽を積み、わずか3年でWBrC王者に駆け上った。ちなみに同王者はアジア人初の快挙だった。
その粕谷氏と梶真佐巳氏が共同出資した「ラダーコーヒー」が、今回のイベントを仕掛けたのだ。実質的な仕掛け人は、「ドトールコーヒーショップ船橋駅南口店」(フランチャイズチェーン=FC店)を運営する梶氏で、同店は全国のドトール店舗の中でも屈指の売り上げを誇る繁盛店だ。ラダーコーヒーは「船橋コーヒータウン化計画」を掲げ、焙煎所も設置し、18年2月のカフェ開業に向けて準備を進めている。
意気込みは評価したいが、千葉県の都道府県別喫茶店数は1454店で、静岡県(人口約380万人)の1439店と同レベルだ。1位の大阪府(喫茶店数9337店。人口約888万人)、2位の愛知県(同8428店。約748万人)、3位の東京都(同6999店。約1370万人/人口はいずれも店舗数の調査時点)に比べて、コーヒー熱が低い地域での取り組みだ。
筆者は全国の街おこしの大小の実例も取材してきた。成功例で多いのは、「あるもの探し」をテコにした活動だ。有名な事例では、大分県の由布院は、「昔ながらの自然」「農村の風景」「晴れていればどこからでも見られる由布岳」を生かし、保全するまちづくりだった。
今回の「船橋」で行うのは、「ないものおこし」と「あるものづくり」だ。イベントの熱気をうまく取り込めるのか。個々の店を「線」でつなげた今回の活動は評価しつつ、近隣都市も巻き込んだ「面」としてつながり、店同士が共存共栄できるのかを見守りたい。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)
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