「にくスタ」が普及するかは不透明
こうしてみると、「にくスタ」も「ブロンコビリー」のように飛躍的に成長できる可能性がある。ただ、「ブロンコビリー」が高い利益率を誇るのはステーキ店一筋でやってきたことによるところが大きく、一方でワタミは「にくスタ」以外のブランドを複数展開することもあり、「にくスタ」で同様に高い利益率を叩き出せるかはまた別の話となる。
「ブロンコビリー」は自社工場において少品種大量生産することができるため、生産性を高く維持することができる。また、大量仕入れができ食材の内製化が進んでいるため、仕入れコストを抑えることもできる。一方、「にくスタ」は現状3店しかないこともあり、「にくスタ」では同等の規模やレベルで生産や仕入れができないのだ。
「にくスタ」が今後広がっていくかどうかは、まだ予断を許さない状況だ。筆者は、7月上旬にオープンした南砂店に12月中旬の平日昼時に訪れたが、客足はまばらだった。認知度が十分に高まっていないのだろう。
競合との競争も懸念される。「にくスタ」は現在、郊外ロードサイドに2店、商業施設に1店を展開し、おそらく今後も郊外ロードサイドと商業施設を中心に出店を進めていくと考えられるが、そこでは「ブロンコビリー」のほか、ステーキ店の「いきなり!ステーキ」や「ペッパーランチ」が立ちはだかるだろう。「いきなり!ステーキ」はこれまで繁華街を中心に出店を重ねてきたが、今年から郊外ロードサイドでも出店を重ねている。ペッパーランチは商業施設での展開が多い。どちらも「にくスタ」と大きく被ることになるだろう。
今年10月にステーキ店「ケネディ」が破産したのも見逃せない。「ケネディ」の近くに「いきなり!ステーキ」が出店するなど競争が激しくなったことで破産に追い込まれたと考えられている。現状に鑑みると「にくスタ」も二の舞にならないとは限らない。競争を勝ち抜くためには、これまで以上に競争力を高める必要があるだろう。
いずれにしても、ワタミとしては「にくスタ」など非居酒屋業態を育てることで収益の柱を複数確立したいところだろう。そして脱「和民」を成功させて業績を回復させるには、「にくスタ」の成否がカギとなりそうだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。