ちなみに、5年に1度実施されている総務省の「国勢調査」の経費は約670億円(15年度予算による)。NHKはこれと遜色のない規模の調査を毎年繰り返しやっているようなものだ。しかも、NHKが調べているのは「その世帯にテレビがあるかないか」と「受信料を払ってくれるか否か」だけである。念のため、「訪問巡回」でほかにも調べていることがあるのかNHK広報局に訊ねたところ、「ない」とのことだった。
「未契約900万世帯」という数字の正確度
この「受信契約および受信料の収納」に経費をかけすぎだとの批判に対し、「この経費には、未契約の約900万世帯を契約させるための費用も含まれている」との反論も、きっとあるだろう。これらすべての世帯と契約することに成功すれば、毎年1350億円(年1万5000円×900万世帯)もの受信料が上積みされる計算だ。しかも、滞納世帯の分と合わせれば年1500億円となり、450億円の経費はその3分の1以下にとどまる。だから、社会通念上も許される範囲の経費だろう――といった類いの反論である。
では、この「未契約の約900万世帯」という数字はどれくらい正確な数字なのか。
17年1月1日現在の日本の全世帯数は、約5748万世帯。そのうち、NHKが受信契約の対象としているのが約4600万世帯だとすると、国内の約1148万世帯がテレビを持っていないことになる。NHKが「未契約」と呼ぶのは、この「テレビを持っていない世帯」ではなく、テレビはあるもののNHKと受信契約を結んでいない世帯に対してである。
では、その世帯に「テレビがある」ことを、NHKはどのようにして確認したのか。NHKが07年6月に作成した資料「日本放送協会(NHK)の受信料収納業務について」を見ると、その4ページに「業務実施のフローと困難さ」として、「滞納世帯」と「未契約世帯」の定義が書かれている。
要約すれば、1軒1軒を訪問巡回してテレビの設置や転居の有無を確認し、衛星放送についてはパラボラアンテナが住居に設置されていないかどうかを確認し、受信契約を結んでいなければ「未契約」とするのだという。また、住人と直接面接できなかった場合や、面接できたとしてもNHK受信料制度への理解を得られなかった場合も「未契約」としているらしい。そうした作業を積み重ねていった結果、弾き出されたのが「未契約世帯数900万」なのだそうだ。しかし、である。