すでに発生していた「出玉規制倒産」
では、2月から始まった出玉規制の影響はどうか。これは出玉の上限を2400個から1500個に抑えるというものだが、経過措置によって検定を通過した現行機は最長3年間は稼働することができる。そのため、完全な入れ替えは21年になる見込みだ。
17年9月、群馬県の新栄商事が前橋地方裁判所で破産開始決定を受けたが、これは出玉規制の影響があるという。
「このホールはもともと業績が悪化していたのですが、後の取材で出玉規制を見越して事業継続を断念したことがわかりました。ほかにも、出玉規制の影響で事業継続を中止したホールも少なからずあるのではないでしょうか」(同)
ただし、3年の猶予期間があることから、出玉規制ですぐにパチンコホールが大量に潰れるわけではないという。
「04年にも出玉規制で射幸性を抑えた『パチスロ5号機問題』がありましたが、その際もすぐにホールが倒産したわけではありません。ユーザー離れや機器入れ替えに伴う負担の影響が大きく表れたのは07年で、倒産は過去最大の144件を記録しました。つまり、結果的に3年後に影響が出たわけです。今後は、ジワジワと倒産が増える一方で客離れが進行し、機器入れ替えなどの負担に耐え得る体力のないホールは苦境に立たされることが懸念されます」(同)
「パチスロ5号機問題」の当時、ユーザーからは「ハイリスク・ノーリターンになった」などの声が上がり、少なくない数のパチスロ離れが起きたという。今回の出玉規制も射幸性を抑えることが目的であるため、同じような現象が起こるであろうことは想像に難くない。
「全然出ない。ダメだな」とユーザーが新台に魅力を感じなくなれば新たなパチンコ離れにつながる可能性もあるわけで、今パチンコ業界を支えているヘビーユーザーまで離れていくという事態もあり得るだろう。
介護や飲食に参入する大手パチンコホールも
「中小ホールの経営環境はますます厳しくなる」(同)なかで、大手はどう動くのか。今国会でパチンコ業界が熱い視線を送っているのが「IR実施法案」だ。同法案は今国会で審議される見通しで与野党の攻防が予想されるが、「ノウハウがあるパチンコ業界としては、カジノへの本格参入に思いがあるのでは」と谷澤氏は指摘する。
しかし、カジノは未成熟の市場だ。そのため、大手のなかには異業種に参入する動きもあるという。
「老人福祉・介護事業や飲食事業です。パチンコ業界は接客のノウハウを持っており、これらの事業は参入障壁も低い。そのため、『パチンコだけで食べていくのは厳しい』と判断した大手が新規事業を行っているのでしょう」(同)