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梅原淳「たかが鉄道、されど鉄道」

鉄道、1車両当たり年間で何キロ走行? 驚きの鉄道会社別ランキング

文=梅原淳/鉄道ジャーナリスト
鉄道、1車両当たり年間で何キロ走行? 驚きの鉄道会社別ランキングの画像1「Thinkstock」より

 自動車、特に乗用車は年間に2万キロメートルも走れば、よく乗ったほうだといえる。営業車はというと、国土交通省の統計では2015(平成27)年度に乗合、貸切双方を合わせたバスの1台当たりの走行距離は4万420キロであったそうだ。

 鉄道に目を向けてみよう。本連載の前々回で1両当たり1億452万円(2015年度)と記した鉄道車両の年間走行距離や燃費は気になるところだ。これらは国の統計から容易に求められる。

 まずは年間の走行距離だ。2015年度に全国の鉄道事業者で車両が走行した距離の合計は98億5930万キロメートルである。この数値は自ら保有する車両が自らの路線を走った距離に加え、他の鉄道事業者の路線に乗り入れて走った距離も含む。同年度中に在籍した車両の平均両数は6万4501両であったので、車両1両当たりの年間の走行距離は15万2855キロメートルだ。自家用の乗用車ならば多くは廃車という距離をわずか1年で走り抜いている。

 車両1両当たりの年間の走行距離は鉄道事業者の形態によって異なるのであろうか。JR、大手私鉄、地下鉄の3形態別に求めてみた。

 JR北海道、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR四国、JR九州、JR貨物の7社から成るJRの車両1両当たりの年間走行距離は18万2828キロメートルと、全鉄道事業者の数値を上回る。各社とも広大な路線網をもつために距離が延びるのであろう。

 なかでも特に数値が大きいのはJR東海で、35万4212キロメートルにも達する。高速で走ることから、走行距離が延びやすい新幹線の車両の比率が高いからだ。国の統計では2015年度の同社保有の平均両数は3391両であったなか、同社によれば新幹線用の平均両数は全体の62パーセントを占める2119両であったという。

 JR東海は、2015年度に新幹線の車両だけが走行した距離を公表していない。少々古い数値を紹介すると、同社発表の2003(平成15)年度の走行距離は7億3718万キロメートルであった。この数値には山陽新幹線を保有するJR西日本の車両が東海道新幹線を走った距離も含まれ、反対にJR東海の車両が山陽新幹線を走行した分は含まれない。この点をご了承のうえ、7億3718万キロメートルを2119両で除すると、1両当たりの走行距離は34万7892キロメートルとなる。

大手私鉄

 東武鉄道、西武鉄道、京成電鉄、京王電鉄、小田急電鉄、東京急行電鉄、京浜急行電鉄、相模鉄道、名古屋鉄道、近畿日本鉄道、南海電気鉄道、京阪電気鉄道、阪急電鉄、阪神電気鉄道、西日本鉄道から成る大手私鉄15社の車両1両当たりの年間走行距離は14万1486キロメートルだ。大手私鉄中、車両1両当たりの年間走行距離が最も多かったのは名鉄の17万7633キロメートル、最も少なかったのは11万8546キロメートルの東急である。

 断定はできないものの、両社の動向を見ると営業キロの長さが関係しているらしい。2016(平成28)年3月31日現在の営業キロは、名鉄が大手私鉄中3位の444.2キロメートル、東急が同10位104.9キロメートルである。とはいえ、営業キロが同13位の京王の車両1両当たりの年間走行距離は14万7068キロメートルで同5位と、必ずしも比例しない。結局は各社の経営方針に委ねられるのであろう。

地下鉄

 札幌市、仙台市、東京地下鉄、東京都、横浜市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、福岡市の地下鉄10事業者の車両1両当たりの年間走行距離は9万7070キロメートルと、JRや大手私鉄と比べると相当短い。しかも、この数値を上回っているのは10万6992キロメートルの東京地下鉄と10万4071キロメートルの東京都だけ。残る8事業者は10万キロメートルの大台を割り込んでおり、なかでも最少の横浜市の7万1852キロメートルをはじめ、仙台市の7万6667キロメートル、京都市の7万8527キロメートルと、8万キロメートル未満の地下鉄が3事業者存在する。

 地下鉄の車両の年間走行距離が短い理由は列車の速度が遅いからであろう。山岳に掘られたトンネルと比べて断面の小さなトンネルの多い地下鉄では、安全上の理由から列車の最高速度はおおむね時速75キロメートルである。いま挙げた横浜市の地下鉄の表定速度(停車時間も含めた平均速度)はブルーラインが時速35キロメートルほどと大都市の鉄道としてはまずまずの速さながら、グリーンラインは時速27キロメートルほどとやや遅い。これに比べて大手私鉄各社の場合は郊外の区間でスピードを出せる傾向にあり、必然的に車両の走行距離も増えていく。

 現に車両1両当たりの走行距離が多い東京地下鉄、東京都の両地下鉄事業者の車両は、JRや大手私鉄との相互直通運転を盛んに実施しており、郊外の区間も多数走行している。東京地下鉄の場合、車両が合わせて2億9048万キロメートル走行したうち、他の鉄道に乗り入れて走った距離は37パーセントに当たる1億803万キロメートルであった。なるほどこの数値が地下鉄のなかでは多いのもうなづける。

 ちなみに、大手私鉄のなかで車両1両当たりの走行距離が最も少ない東急を見ると、他社である東京地下鉄、横浜高速鉄道、埼玉高速鉄道、西武、東武を走行した割合は44パーセントとJR、大手私鉄、地下鉄中で最も高い。これらのなかで走行距離が特に多いと思われるのは東京地下鉄であるため、車両の走行距離は延びないのであろう。

 次回は、燃費についてみていこう。
(文=梅原淳/鉄道ジャーナリスト)

梅原淳/鉄道ジャーナリスト

梅原淳/鉄道ジャーナリスト

1965(昭和40)年生まれ。大学卒業後、三井銀行(現在の三井住友銀行)に入行し、交友社月刊「鉄道ファン」編集部などを経て2000年に鉄道ジャーナリストとして活動を開始する。『新幹線を運行する技術』(SBクリエイティブ)、『JRは生き残れるのか』(洋泉社)、『電車たちの「第二の人生」』(交通新聞社)をはじめ著書多数。また、雑誌やWEB媒体への寄稿のほか、講義・講演やテレビ・ラジオ・新聞等での解説、コメントも行っており、NHKラジオ第1の「子ども科学電話相談」では鉄道部門の回答者も務める。
http://www.umehara-train.com/

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