東京五輪の前後で“トドメ”を刺される可能性も
パチンコ・パチスロ業界が今すぐ破綻するということはないが、右肩下がりの傾向が変わることはなく、「19年から20年に大きなヤマが来る」とAさんは考えている。
「旧規則の台の認定切れも大きいけど、もっと怖いのは20年の東京オリンピックだね。16年の伊勢志摩サミットでも話題になったけど、大きな国際イベントの際は警備・警護などで警察官が手一杯になるから、パチンコの新台の検査・立ち合いには手が回らず、新台入れ替えは自粛することになる。
オリンピック期間の前後を含めて半年くらい新台が入らないとなれば、お客さんは『新台がないなら、打つのやーめた』となってもおかしくない。しかも、その頃は出玉的魅力の少ない新規則の台が多くなっているはずだから、新台で目新しさをアピールしないと、お客さんなんて呼べやしない」(同)
東京オリンピックでは、多くの外国人観光客が来日することが予想されている。その外国人観光客の目に入るとマイナスになるのが、「風俗店」「パチンコ店」「コンビニの成人向け雑誌」といわれている。「オリンピック」を錦の御旗に、業界の監督省庁である警察庁が「パチンコ店を完全に掌握しよう」と考えたとしても、なんら不思議ではない。
今すぐ業界が危機に瀕することはなくても、衰退が続くなかで迎える東京オリンピックの前後で“トドメ”を刺される可能性はおおいにある。
「19年に買う新台は最大2年、20年に買う新台は最大1年しか使えないわけだから、ホール側はどの台を買うか慎重にならざるを得ない。1台30万円前後かかるわけだから。むしろ、『弱小メーカーの台は一切買わない』という選択肢も出てくるかもしれない。そうすると、今度は売り上げの激減によってメーカーが倒産することもあり得るよね」(同)
聞けば聞くほど、業界の未来は暗い。それでも、Aさんは業界を離れる気はないという。
「パチンコ・パチスロ業界は今まで何度も大きな壁に突き当たってきたけど、こうして大きな市場規模を維持しているわけだから、今回だって乗り越えられるはず。まぁ、今回に限ってはメーカーやホールの力だけでなんとかなる問題ではなく、行政やユーザーを含む、みんなの知恵や行動が求められているといっていいんじゃないかな」(同)
希望は捨てていないが、突破口はいまだ見つからず――。東京オリンピックまで約2年半、旧規則の台の全撤去まで約3年。残された時間が決して多くないのを感じ、戦々恐々とする業界人が増えていることは間違いない。
(文=山下辰雄/パチンコライター)