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山田修「間違いだらけのビジネス戦略」

大成建設、リニア談合「否定」で検察に徹底抗戦…社員寮に資料隠匿疑惑、競合と「勉強会」

文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント

 この抗議文が提出されたところ、特捜部はそれに答えるどころか(その義務はもちろんない)、2日夜も第3回目の同社への立ち入り捜査を行ったのである。これは異例のこととされ、大成建設に対する特捜部の疑惑は以前から強いものがあったと推測される行動だ。

 疑惑を裏付けるような大成建設側の行動もあった。昨年12月に特捜部の捜査が始まってから、談合案件に関連する資料や書類を社員寮に移動し、2月に行われた社員寮への捜索で資料が押収された。同社は検察の調べに対し「罰金付きの守秘義務を課せられていた上、今後の工事で参考になるので移動させただけ」などと隠匿の意図を否定しているというが、常識的に通用する説明ではなく、隠匿と批判されても仕方ないだろう。

「勉強会」がいけない

 前述のとおり、大成建設と鹿島は、「4社間の接触はあったが、単なる情報交換だった」として談合を否定している。もし不公正取引に厳しい欧米であれば、とても通らない理屈だ。

「あの工区、技術的に難しいな」と、A社とB社の両方の幹部が述べたとする。A社のほうは本音で言ったとしたら、その工区の受注意欲の低さを吐露している。B社はただ相槌を打ち、「A社の応札の可能性は低いので、ウチは少し高く札を入れてもいいだろう」と、有能なビジネスパーソンならそう思わなければいけない。これはそのまま、不公正競争の端緒となっている。

 4社でリニア工事を担当し、今回の談合疑惑に関与したとされるのは、いずれも「理系技術者」で技術的興味が強いとされる幹部たちだ。リニア関連工事に関する技術情報を共有しようとする意欲が強かったと推測される。逮捕された大成建設の大川容疑者と、談合を認めた大林組の元副社長は早稲田大学理工学部の同級生で、同窓会やゴルフコンペなどで定期的に会っていたとされる(3月3日付読売新聞記事より)。

「会社は談合防止のルールをつくっている。不正が事実だとすれば、個人の問題だと思う」(同記事より/鹿島社員のコメント)

 このコメントはこの業界の不公正取引への意識の低さを物語っている。元同級生の2人が特定の工事について情報を交換、共有することは、個人間の親睦ではなく企業としての不正行為なのだ。大手ゼネコン4社は、たび重なっていた談合事件を反省して2005年12月に「談合決別宣言」を出した。ところが4社はリニア工事が始まる前後から、将来受注を目指す工区ごとに工法や地質の研究を行う「勉強会」を開いてきたという。

「談合しなくても、どのゼネコンがどの工区の受注を目指しているのか周知の事実だった」(同記事より/ゼネコン関係者)

 つまり、「勉強会」という名の談合だったことになる。

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

経営コンサルタント、MBA経営代表取締役。20年以上にわたり外資4社及び日系2社で社長を歴任。業態・規模にかかわらず、不調業績をすべて回復させ「企業再生経営者」と評される。実践的な経営戦略の立案指導が専門。「戦略カードとシナリオ・ライティング」で各自が戦略を創る「経営者ブートキャンプ第12期」が10月より開講。1949年生まれ。学習院大学修士。米国サンダーバードMBA、元同校准教授・日本同窓会長。法政大学博士課程(経営学)。国際経営戦略研究学会員。著書に 『本当に使える戦略の立て方 5つのステップ』、『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(共にぱる出版)、『あなたの会社は部長がつぶす!』(フォレスト出版)、『MBA社長の実践 社会人勉強心得帖』(プレジデント社)、『MBA社長の「ロジカル・マネジメント」-私の方法』(講談社)ほか多数。
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