1本5千円のワインボトル入り高級茶がバカ売れ…ロイヤルブルーティーの「全員ハッピー」戦略
相変わらずのデフレ環境にもかかわらず、高い付加価値を提供することにより低価格競争を回避している企業も数多く存在している。今回取り上げるロイヤルブルーティージャパン(以下、RBTJ)のワインボトルに詰められたお茶は、最低でも2800円、ボリュームゾーンは5000円程度という価格にもかかわらず、好調な販売を維持している。
厳しい市場環境において、RBTJはいかなるマーケティング戦略を実行し、好調な業績を維持しているのか。RBTJの吉本桂子社長へのインタビューを踏まえ、考察していく。
RBTJのマーケティング
創業当初のコンセプトは、“高級品を高級店で!”だった。同じ畑でも、良い茶葉がつくれる場所と、悪い茶葉しかつくれない場所があるなど、一口に「お茶」と言ってもさまざまなレベルに分かれるが、RBTJは「最高の場所で、最高の人がつくった手摘み茶葉」しか扱わない。このような取り組みにより、ピラミッドの頂点に位置する高級茶葉(手摘み茶)市場を大きくできれば、その波及効果により茶葉市場全体が拡大し、結果として茶農家も潤うというビジョンが描かれた。
(1)商品
商品は日本茶を中心に青茶などのボトルドティーに加え、茶葉の販売も行っている。売り上げの中心は日本茶のボトルドティーである。こうしたボトルドティーは手摘みの最高茶葉を3~7日間かけて水出しにより抽出したものをワインボトルに詰めている。添加剤不使用はもちろんのこと、本来のデリケートな味わいを損なわないように加熱殺菌も行っていない。その代わりに茶飲料では初となるフィルター濾過除菌を採用している。高度な品質管理、技術力がなければ実現できず、すべての工程は手作業となっている。
茶葉の仕入れは、“この土地のこの人”と決めて仕入れている。具体的には、最高のお茶をつくっているという情報を基にRBTJサイドから依頼する場合や、逆に最高の茶場しか使わないというRBTJの噂を聞き、農家サイドから持ち込まれる場合もある。仕入れ先の決定においては最高の茶葉であることはもちろんのこと、たとえ小規模の農家であっても、今後さらに良い茶葉をつくっていくという熱意や広がりを感じることができる点を重要視している。こうした基準により、仕入れ先を決めるのに長い年月がかかる場合も少なくはない。ちなみに、仕入れ価格はすべて茶農家の言い値で購入すると決めている。つまり、コンセプトに掲げている茶農家が潤う価格が具現化されている。こうした買い取り策は、「その代わり一切お茶づくりに妥協しないでほしい、さらに良い茶葉を目指してほしい」という期待やプレッシャーの裏返しとも捉えられる。
お茶を詰めるワインボトルは、見た目の良さを意識したと思われがちだが、本質的には空気が入りにくく、光も遮断できるという機能性の高さにより採用している。飲む際はワイングラスに注ぎ、香りを楽しんだ後に飲むことが推奨されている。
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