値上げをするかどうかが焦点
ここで、串カツ田中のことをあまり知らない方のために、簡単に同店のこれまでの歩みを紹介したい。
串カツ田中の1号店は、08年12月に東京都世田谷区でオープンした。23区内ではあるものの、繁華街ではなく、必ずしも好立地とはいえない場所にあった。しかし、1年もしないうちに営業開始前から行列ができるほどの繁盛店になったという。
串カツは、昔から大阪の下町で愛され、よく知られた食べ物だったが、それ以外の地域ではあまり馴染みがなかった。串カツ田中は、そんな串カツをそのまま東京に持ってきて売り始めたわけだが、同業種の競合が少なかったことや、大半の串カツが100~120円程度と低価格であること、他店にはないオリジナルのソースや衣、油があることなどが理由で、大いに受けることとなった。
その後、関東圏を中心に店舗網を広げていき、17年11月期末時点で店舗数は166店にもなった。特に12年11月期以降の伸びが大きく、1年当たり20〜30店の出店を行っている。今期は例年を大きく上回る55店を出す計画だ。今期以降も年間55店程度の出店を行っていく方針で、目標とする「全国1000店体制」を早期に実現したい考えだ。
串カツ田中の業績は好調だ。17年11月期の単独決算は、売上高が前年比39.2%増の55億2900万円、本業の儲けを示す営業利益は同22.4%増の3億8700万円だった。新規出店で38店が純増したほか、既存店売上高が2.7%増えたことが寄与した。客単価は下がったものの、客数が大きく伸びている状況にある。
さらに、近頃の株価も堅調だ。3月22日、みずほ証券が投資判断を「買い」、目標株価を4800円に設定したことが影響し、一時前営業日比11%高の3530円まで上昇、終値は3400円を付けた。以降は3000円台前半で推移する。3月度の月次報告の発表があった4月4日に再び急騰し、終値は前日比9%高い3785円を付けた。その後は3000円台後半で推移している。
4月4日発表の3月度月次報告によると、3月度の既存店売上高は前年同期比2.1%増だった。17年12月から18年2月までだと同3.7%で推移している。こうした状況を投資家は好感しているようだ。
串カツ田中の好調はしばらく続くだろう。そうしたなか、値上げを行うかどうかが当面の焦点となる。飲食業界で値上げが相次いでいるためだ。また中長期的には、1000店体制を達成するのはいつになるのか、年間55店の出店を維持できるのかが焦点となるだろう。串カツ田中の今後の動きに関心が集まる。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。