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前代未聞…住友と古河が別会社を舞台に熾烈抗争

文=編集部

時代に逆行する相談役制度

 UACJは古河電工の軽金属部門が中心となって03年に設立した旧古河スカイが母体である。現在でも古河電工が24.91%を出資する筆頭株主だ。旧住友軽金属の親会社である住友金属工業は新日本製鐵と合併して新日鐵住金となったため、住友金属が保有していた株式は新日鐵住金名義になった。その結果として、新日鐵住金がUACJの株式の7.74%を保有する第2位の株主なのだ。

 合併前の売り上げは旧古河スカイ側が上回り、さらに古河電工が断トツの筆頭株主。そのため、旧古河スカイ側が経営の主導権を握ると見られていた。ところが、会長の椅子に座った旧住友軽金属出身の山内氏のほうが役者は上手だった。人事を握った山内氏は、旧住友軽金属出身者を厚遇し、旧古河スカイ組は冷や飯を食うようになった。実は、住友軽金属は多額の有利子負債を抱え、単独での経営は危ぶまれていたが、技術力や人材面の厚みでは旧古河スカイより数段上だった。

 そして、山内氏が策定した新首脳人事で旧住友軽金属への傾斜がはっきりと表れた。これに堪忍袋の緒が切れた古河電工は、筆頭株主という伝家の宝刀を抜いた。山内氏を追い落とすために岡田氏を道連れにしたといえる。

 古河電工の主張は、コーポレートガバナンス(企業統治)の正常化であり、「社長の上に代表権を持った会長と副会長がいては、誰が経営の最終責任を取るのかはっきりしない」ということだった。正論ではある。

 しかし、人事抗争による感情のもつれは簡単にほぐれそうにない。新たに代表権を持つ2人の専務執行役員は生え抜きではない。中野隆喜氏は東京大学法学部を卒業後、新日本製鐵から古河スカイに転じた。種岡瑞穂氏は一橋大学社会学部を卒業後、住友商事から住友軽金属への移籍組だ。

 UACJの18年3月期の売上高は6300億円、営業利益は300億円の見込み。アルミ圧延国内最大手で世界3位だ。

 ドナルド・トランプ米大統領は、アルミニウムに10%の輸入課税を発動した。業界一丸となって対処しなければならないのに、業界トップのUACJが人事争いの体たらくぶり。

 相談役や顧問を廃止する企業が相次ぐなか、行き場をなくした2人が相談役になる。「取締役を退任させることが重要」としか考えていなかった古河電工に、世の中の流れを読む余裕などなかったのかもしれない。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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