決算発表
スルガ銀行は2018年5月15日、静岡県沼津市のスルガ銀行本店で決算発表会見を行った。出席したのは米山明広社長と白井稔彦専務(経営企画担当)。“傀儡社長”と揶揄される米山氏が「シェアハウス問題で多大な迷惑とご心配をかけた。おわび申し上げる」と謝罪したが、銀行や行員の不正の指示や関与があったかについて米山社長は「わからない」を連発した。
シェアハウスへの融資だけでなく融資全般は、創業家出身の岡野光喜会長兼CEOの直轄だった。コンピューターが専門で、17人抜きで社長になった米山氏は、シェアハウス融資の実態について、何も知らされていなかった可能性もある。
記者会見で「営業幹部が審査担当を恫喝した事例もあった」ことが明かされた。今後の詳細な調査は、新たに設置された第三者委員会(委員長:中村直人弁護士)が行う。「かぼちゃの馬車」の融資の大半を行ってきた横浜東口支店では、融資をする条件として、高利の無担保ローンを強制的に(抱き合わせで)借りさせていた。この点について米山社長は「銀行の良識としてあり得るのか。反省している」と釈明したが、スルガ銀行では、こうした融資の手法が堂々とまかり通っていた。いわばスルガ銀行では“常識”だった。
「不正の陰に数字あり」だった。ノルマに追われた行員には、高利の無担保ローンを抱き合わせるのは、当たり前の営業手法だった。静岡県外の多くの支店では、新規融資の目標額が1カ月ごとに設置され、達成度合いがボーナスや出世に響いたという。未達が続くと厳しく叱責され、ダメと評価された行員は営業部門から外された。
会見での、主な一問一答は以下のとおり。
Q:「行員が不動産販売会社に不正を指示したのか?」
A:「第三者委に確認してもらわないとわからない。社内調査の結果では、指示したというものはなかった」(米山社長)
Q:「不正の認識の時期は?」
A:「十分把握できていない。どのタイミングかは第三者委できちんと調べて公表したい」(白井稔彦専務)
Q:「中古1棟(売り)マンション投資の融資でも不正があったのか?」
A:「一部調査している。ここも第三者委で見てもらいたい」(白井氏)
Q:「いつからシェアハウス融資は始まったのか?」
A:「2013年からで、15、16年に非常に増えた。(投資スキームは)スルガ銀行が提案したものでは一切ない」(白井氏)
第三者委の調査は2~3カ月かかるという。
スルガ銀行は、融資を受けたオーナーに対して金利の引き下げなど返済条件の変更などに応じる考えだが、元本の減免などには応じず返済を求めていくとしている。シェアハウスの建物での現物返済は認めない方針だ。
スルガ銀行の、ある営業担当者は「業者が何かやっているとしても、『それはそれ、これはこれ』と思ってしまっているところがある」と述べている。ノルマを達成するために行員は、何も考えず黙々と働いた。「女工哀史」ならぬ「スルガ銀行行員哀史」である。
スルガ銀行のオーナー、岡野光喜氏の経営責任を追及することは、同行のビジネスモデルを賞賛した金融庁(森信親長官)にお任せしたい。
(文=編集部)