松屋フーズ、松のやがとんかつ和幸を追い上げ
松屋フーズは、牛丼事業が0.6%増の784億円、とんかつ事業が33.3%増の114億円だった。
とんかつ業態の松のやと「松乃家」は、「ロースかつ定食」(530円)など手頃な価格のとんかつメニューを武器に、大きく成長している。近年出店攻勢を強め、18年3月期だけで約30店も増えた。
現在、松のやと松乃家で国内に約150店を展開し、「ロースカツ定食」(745円)などを提供する「かつや」(約370店)や、「ロースかつ御飯」(1200円程度、店舗により異なる)などを提供する「とんかつ和幸」(レストラン業態で約160店)を追いかける。
市場調査会社の富士経済が昨年10月24日に発表した国内外食産業の市場調査によると、とんかつ・かつ丼の17年の市場規模は16年比20%増の540億円を見込んでおり、成長性が高い市場と位置づけている。松屋フーズのとんかつ業態の店舗数は現状まだ多いとはいえないが、市場の拡大に合わせて今後大きく化ける可能性がある。
“本業”の牛丼事業
牛丼大手3社の非牛丼業態を見てきたが、主力の牛丼業態はどうだろうか。
4月末時点の国内店舗数に関しては、すき家が1941店、吉野家が1200店、松屋が957店だった。前年同月からの増減数は、すき家が22店減、吉野家が5店減、松屋が14店増となっている。3社ともここ数年の店舗数は横ばいで推移しており、牛丼市場は飽和感が漂う。
17年度に関しては、牛丼に使う原材料の価格の高騰が大手3社の牛丼事業を直撃した。特に牛丼に多く使う「ショートプレート」と呼ぶ米国産冷凍バラ肉の高騰が続いている。農畜産業振興機構によると、17年度のショートプレートの卸値の平均は1キロあたり784円と2年前より3割ほど高い。
背景にあるのは、中国での牛肉需要の高まりだ。03年のBSE(牛海綿状脳症)発生を機に、中国で禁止となっていた米国産牛肉の輸入が17年に再開された後、中国の伝統料理の火鍋向けなどでショートプレートの需要が増えており、その影響で日本向けの卸値が上がっている。
こうした状況から、すき家は昨年11月に牛丼の一部メニューで10〜50円の値上げをした。松屋も今年4月から牛丼の一部メニューで10〜50円の値上げをしている。吉野家は14年4月と同年12月に値上げを実施しており、昨今のショートプレートの高騰に対しては今のところ静観している。いずれにしても、3社とも厳しい状況に追いやられているといえるだろう。
大手3社としては、牛丼業態だけに力を入れていては大きな成長が見込めない。第2、第3の事業の育成が不可欠だ。ゼンショーHDはそれが「はま寿司」であり、吉野家HDが「はなまる」、松屋フーズが「松のや」「松乃家」となっている。今後はこれらの動向に、より関心が集まりそうだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。