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オリンパス、腐敗行為防止法違反の疑い…社員が内部通報も、揉み消しか【1】

文=山口義正/ジャーナリスト
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 だが、安平泰への報酬支払いは、不自然なほど極端な成功報酬のかたちをとって決められており、安平泰を介して賄賂を渡していれば贈収賄法令違反の疑いも生じる。OSZ幹部の中にはこれを問題視し、オリンパス本社の社長以下役員に報告したが、すでにさまざまな契約が締結され、手続きも進んでいるために黙殺されるかたちになった。しかもその間、一部の役員はこれが取締役の責任問題になることを嫌って、「地域統括会社の権限の範囲で処理するように」と指示していた。現場に責任を押しつけるかたちになっていたのだ。

 深セン問題の経緯に危機感を覚えたオリンパス社員が監査役に通報。米連邦海外腐敗行為防止法(FCPA)に違反する恐れがあるとして、オリンパス取締役会は社内調査委員会を立ち上げた。FCPA違反ともなれば、米国から数百億円もの罰金支払いを求められる恐れが生じるため、取締役・監査役としては打ち捨てておけない。こうして約8カ月もかけて調査・作成されたのが、上記の「最終報告書」だった。

最終報告書

 最終報告書はオリンパスの役員や社員の対応、契約締結承認の手続きに「内部統制上の問題を多く見受ける」としながら、「日本、米国及び中国の贈賄関連法令に違反する行為があったとの認定には至っていない」としてオリンパスにお墨付きを与える内容になっている。

 筆者は門外不出だった最終報告書をもとに、損失隠し事件で最初のスクープ記事を掲載した月刊誌「FACTA」(ファクタ出版)に再び記事を書いた。「問題なし」の結論を得ていながら、銀行から送り込まれていた当時の会長と専務が揃って退任するなど、不可解な点が多かったからだ。最終報告書が作成された翌年、つまり2016年6月(7月号)のことである。

 ところが最終報告書の作成においても、調査を依頼した法律事務所や弁護士の選び方にまで問題が隠れていたのだ。その法律事務所は過去にオリンパスと顧問契約を結ぶなど利害関係にあったため、客観的で公平な立場から弁護士としての見解を述べるのは難しい。しかもFCPA違反の疑いについて、最終報告書の指摘には曖昧な点や、巧妙に触れずにおいた点が少なくなかったのだ。

 大手法律事務所から最終報告書の提出を得て、オリンパスはこの問題にうまくフタをしたと思っていたはずだ。筆者が「FACTA」などに記事を書いても「問題はなかった」と強弁するばかりだったからだ。

 しかし2017年になって、ある人物の出現により、事態は思いもよらぬ方向へ転がり始める。
(文=山口義正/ジャーナリスト)

●山口義正
ジャーナリスト。日本公社債研究所(現格付投資情報センター)アナリスト、日本経済新聞記者などを経てフリージャーナリスト。オリンパスの損失隠しをスクープし、12年に雑誌ジャーナリズム大賞受賞。著書に『サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件』(講談社)

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