サヨナラ、「体育会系上司」。日大アメフト部問題は、日本企業によくある風景
国境を越えて企業のブランディング・コミュニケーションを手掛けるマーケターが、時流に合わせて日本独自の文化、習慣を紐解きながら、21世紀に日本企業が世界で生き残るための視点やヒントを考察する。
今回取り上げるのは、連日報道されている、関西学院大学と日本大学のアメフトの定期戦で起きた悪質な反則プレー問題だ。この問題では反則を行った日大の選手本人が会見を開き、自らの言葉で内田正人前監督や井上奨前コーチの指示によって反則におよんだと語った。その後、会見を受けて当の監督やコーチが選手の主張を真っ向から否定して大きな議論を呼んだ。本稿では、この問題の核心である“体育会系マネジメント”の実態について考えたいと思う。
今回の騒動によって私が抱いたのは、学生スポーツで起きたあまりに酷いラフプレーや大学の危機管理対応の醜悪さに対する怒り、選手たちへの同情とともに、強烈な既視感だ。私にはこれが、日本企業に蔓延する“体育会系マネジメント”の負の側面を象徴しているように思えてならない。むしろ、どのビジネスの現場にも通じる日本社会そのものが積み上げてきた、教育やマネジメントの本質的な課題が噴出した事象と捉えるべきだろう。
前監督と前コーチの反論は、日本企業でよく見られる言い逃れのロジック
私が注視したのは、前監督や前コーチの反論の方便だ。「『潰せ』とは言ったが選手が解釈を間違えた」「こちらから具体的な指示はしていない」というロジック。実際の真偽はここでは問わないが、あなたはこうした物言いに身に覚えはないだろうか? 「部下が指示を誤って解釈した」「お互いのコミュニケーション不足が原因」など、一部の管理責任は認めつつもクリティカルな問題への関与は否定し、トラブルを部下のせいにして丸め込もうとするケースは日本企業のどこにでも“よくある風景”だ。
むしろ、一般企業はこうした責任逃れがしやすい環境にあるのではないだろうか。社内で発生したトラブルの場合、事実認定をするのは会社であり、往々にして会社(≒経営者)に都合良く処理される可能性が高くなるだろう。日大のように第三者から非難され責任を追及されるなら話は別だが、そのようなケースは逆に稀。ほとんどのケースでは、真実を明らかにすることよりも、会社のダメージを減らすためのロジックが優先されるだけだ。