リカバリーウエア
睡眠時における「疲労回復」を主眼に置いたウエアも注目を集めている。これは株式会社ベネクス(神奈川県厚木市)が休養・睡眠時専用の「リカバリーウエア」として独自に研究開発したものだ。同社は、ナノプラチナなどの粒子状の鉱物を繊維に練り込んだ特殊な新素材で製造したTシャツやタイツ、ネックウォーマーなどを販売している。
現在、スポーツ用品業界では運動効率を上げることを目的とするウエアは多く出回っている半面、「休養」に着目した製品は少ないのが現状だ。そんな中、「よりよく休むこと」が翌日のパフォーマンス向上につながるという発想で商品づくりをしている点がユニークだ。同社マーケティング担当の友部崇さんはこう話す。
「このウエアを通じて一般の人々の意識のなかで休養というものの立ち位置をもっと高くしたいのです。現代人にとって休養は、日常の他の活動に比べてどうしても軽視されがちです。けれど仕事においても日常生活でも、パフォーマンスを上げるには休養の質を高める必要性があるのです」
同社の製品は、特殊技術で繊維に練り込んだナノプラチナなどが発する微弱な電磁波が、リラックス時に働く副交感神経に作用して筋肉の緊張をほぐし、血流を促すという。もともとは中村太一社長が大学卒業後、有料老人ホームの運営会社に入社し、介護現場で寝たきりの人の血行不良による床ずれの問題を知ったことが開発のきっかけとなったという。その後、中村社長がナノ素材の開発会社と共同研究を重ねた結果、プラチナなどのナノ化した鉱物を素材に一定量配合すると、特定波長の遠赤外線が出て、血行促進や免疫細胞の活性化などによる疲労回復効果が得られることを発見した。
さらに国内外の大学の研究機関の協力を得て実験を繰り返すなかで、この新素材(DPV576)が肉体疲労と精神疲労の両方を改善する働きがあることが次第にわかってきたという。米チャールズドリュー医科学大学で行われた実験によると、加齢により免疫能力が低下したマウスをDPV576使用群と未使用群とに分け1カ月間テストをした結果、DPV576使用群では感染、腫瘍、自己免疫疾患から宿主を防御すると考えられている白血球中の免疫細胞Tリンパ球活性状態スコアが、約2倍程度増加していることがわかったという。
このほか東海大学で行われた実験では、DPV576繊維素材を着用することによって、ストレスを感じたときに出るとされる「唾液中クロモグラニンA」が未使用群と比較してより出にくくなり、ストレスが軽減したと推測されるとの結果が出た。
そこで試しに、同社の「リカバリークロス」という肩掛け状の製品を着用してみたところ、10分ほどで体が緩やかに温まってくる感覚があり、ほのかな眠気を感じた。Tシャツ1枚が1万円程度と安いものではないが、睡眠時間を利用して疲れを効率的に取ることが期待できそうだ。
(文=奥山暁子/フリーライター)