外部調査は「組織ぐるみ」で行われたかが焦点
ヤマトHDは7月23日、YHC内に外部専門家で構成する調査委員会(委員長・河合健司弁護士)を設置。原因究明や抜本的な再発防止策の策定を進めることにした。8月中に調査結果の報告を受ける。調査の焦点は「組織ぐるみ」だったかどうかだ。
告発者の槙本氏は、引っ越しの水増し請求が横行した原因について、法人契約に盲点があるとしている。
(1)法人契約の場合、すべての引っ越しをYHCが引き受ける代わりに割引が適用される。そのため、依頼企業は他社との相見積もりを取らない。
(2)依頼企業の従業員は自分の財布からお金を出すわけではないので、見積もりが正しいかについての関心が低い。
(3)経理担当者も従業員の家にどれだけの荷物があるか知らないから、YHCが出してきた請求書通りに支払う。
信頼関係にあることを逆手にとって、YHCの担当者が水増し請求をしていたという構図が浮かび上がってくる。
ヤマトHDは8月6日までに、全国128事業所中123事業所で不正があったことを国交省に報告した。不正がなかったのは5事業所だけということだ。
不正は社員に伝播した“院内感染”みたいなものだ。だがヤマトHDは、上司が指示した「組織ぐるみ」の不正ということを今後も否定する可能性が高い。
YHCの売上高は17年3月期の491億円から、18年3月期は489億円へ2億円ダウンした。セグメント利益(営業利益)は10.7億円から5.2億円に半減した。
この2年間の営業利益は合計15. 9億円。2年間の過大請求額の合計は、当初公表した数字だけで17億円ある。YHCの業績は実質的に営業赤字だった可能性が出てくる。過大請求で利益をかさ上げしていた実態が浮かび上がってくる。
ヤマトHDは傘下のヤマト運輸で17年、宅配便ドライバーに対する230億円の賃金の未払いが発生し、構造改革の真っ只中にある。ヤマト運輸は人手不足やネット通販の荷物の増加を理由に昨年10月、個人向け基本運賃を平均15%値上げした。大口の法人顧客1100社に対しては、個人を上回る値上げを実施した結果、大口顧客の4割が流出した。