だが、現在の状況や鳥貴族が発表した対策などを総合的に勘案してみると、同社が示した見通しの実現性に疑問が残る。特に「既存店売上高3%減」については大いに疑問がある。
前期は値上げの影響で客単価が前年比2.1%増とそれなりに増えたが、これまでと同じ運営をするならば、値上げ効果がなくなることから、客単価はおそらく今期は前期から横ばいになると考えられる。そうなると、売上高は客数次第となるわけだが、現在の客数の増減率がおよそ10%減となっていることを考えると、売上高が3%減で収まるとは考えにくい。
もし本気でこの数字を実現させたいのであれば、集客効果が高い割引セールを実施して集客を図る必要があるだろう。もちろん、割引に頼らず集客できるに越したことはないが、現実的には難しい。一方で、割引セールに頼らなければならないのであれば、「値上げは一体なんだったのか」との疑問が湧く。そのため、割引セールに頼った集客策は根本的な問題解決策にはならないといえる。
値上げの目的はコスト増に対応して利益率と利益の低下を防ぐことにあったが、客数が減って売り上げが縮小してしまっては、いくら利益率を改善したとしても利益の“額”が増えることはない。そのため、客数減の流れは、なんとしても止める必要がある。
そこで、以前の価格の「一律280円」に戻してはどうだろうか。つまり、値上げの判断が間違っていたことを素直に認めるのだ。
業種は異なるが、ファーストリテイリングが運営するカジュアル衣料品店のユニクロが、15年まで2年連続で実施した値上げの失敗を素直に認めてすぐに値下げし、それにより客足の回復に成功したという例がある。柳井正会長兼社長は日本経済新聞の取材に対し、値上げについて「通用しなかった」と戦略ミスを素直に認めている。鳥貴族も、これに倣ってはどうだろうか。
値下げしないのであれば、メニューのより一層の充実など値上げに見合った価値を提供することが不可欠だろう。いずれにしても、抜本的な対策が急務といえそうだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。