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イオン家電、保湿効果やうるおいは無関係?度重なる改善命令でも誇大広告消えないワケ

 結果が出たのは12年7月だった。東京都生活文化局が、国内の大手家電メーカーが製造する複数のイオン機能付きヘアドライヤーに関して、景品表示法に基づいて改善を要請した。対象となったのはパナソニック、シャープ、日立リビングサプライ、東芝ホームアプライアンスの4社。カタログなどに掲載されたデータも、「消費者の一般的な使用方法とは乖離した試験条件等による実証試験に基づいて効能効果を表示していたことが判明したため(中略)より適切な実証試験を行うよう改善を要請」したという。さらに業界関連団体である全国家庭電気製品公正取引協議会に対しても、性能や効能効果について、「消費者の一般的な使用方法に即した試験を行うこと」も要望している。(http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2012/07/20m7b300.htm)

 東京都の示した改善点を要約すると、以下のようになる。

(1)「冷風モードで20~30分使用」など、一般的な消費者の使用実態とかい離した設定の実証試験を行って、効果があったと謳っている。(4社中3社)
(2)実証試験の被験者が1人だけだったというケースもあり、誰が使用しても同一の効果があるとは言い難い。(4社中3社)
(3)使用後に頭皮の皮脂が減少したとしているが、それがイオンによる効果であるかは実証されていない。(4社中2社)

 つまり、通常の使用環境で使っても、カタログに表示された性能は発揮されないケースがあるということだ。これまではこうした「イオンの効能効果」を実証するための試験は、JISなどの公的基準も定められていない。各社の判断で独自に検証しているのが実態だった。

●効果がないことを取り上げないメディア

 ただし、こうした措置が取られても、製品そのものが発売中止されるわけではない。景品表示法は広告などの不当表示を防ぐための法律だ。基本的に、担当部局の指示に従って表現を修正すれば問題はない。

 とはいえ、問題はこうした情報が一般消費者に承知してもらえるかどうかだ。昨今のツイッターやSNSを見ればわかるように、一度拡散したものは、後で取り消そうとしても手遅れのことが多い。元の投稿を削除・訂正しても、リツイート(RT)されてしまえば、投稿者の手を離れてどんどんと広まってしまうのだ。

 メーカーとしてみれば、「こんな効果がある!」ということはどんどん宣伝したいが、「実は効果がなかった」となると積極的になることはない。メディアが独自に報道しなければ正しい情報は伝わらないのだが、それが難しい。

 新聞には訂正記事が掲載されるが、ごく小さな扱いだ。テレビでは短いニュースくらいはあるものの、情報番組には登場しそうにない。雑誌も同様だ。健康・美容情報を扱うある雑誌の編集者に、こう聞かされたことがある。

「イオンは効かないだろうなと、個人的には思っていましたが、健康雑誌のテーマとして『効くか効かないか』は取り上げづらいのが実情です。『こんなに効く!』という情報なら取り上げますが、『いかに効かないか』は雑誌としても扱いにくい。人体に悪影響があるということが実証されれば、報道する必然性はありますが……」

 このコメントに、「ニセ科学報道」の在り様は要約されている。「こんなに効く!」としてさんざんメディアで紹介された後に「効果はなかった」とわかっても、インパクトがないのだ。結果として消費者の意識には、最初の「こんなに効く!」という情報だけが残ってしまう。

 この改善要請を受けた各社は、すぐにカタログやホームページの表示を訂正した。問題の箇所はすでに削除されるか修正されており、今ではどの部分が景品表示法に違反していたのかわからない。問題視される前に宣伝していたままのイメージを保って、同じ製品が売り続けられることになるのだ。

 ちなみに、改善要請を受けた4社のうちの某社は、それから4カ月後、同じイオン発生器を搭載した掃除機で、景品表示法に基づく措置命令を消費者庁から受けることになる。
(文=六本木博之/フリーライター)

BusinessJournal編集部

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