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高橋潤一郎「電機業界の深層から学ぶビジネス戦略」

経営逼迫の電機メーカー2社、破綻回避への動きが最終局面…市場が注視

文=高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役
経営逼迫の電機メーカー2社、破綻回避への動きが最終局面…市場が注視の画像1「Gettyimages」より

 電機業界において経営状態が逼迫していた2社が相次ぎ資本提携で合意、ひとまず回復への道筋をつけた。資金受け入れで当面の運転資金を確保するとともに、業務面でも出資先との協業を模索することになる。

 提携の具体的寄与はまだ先となるだろうが、改めてこれまでの動きを総括して、今後の資本受け入れ先とのシナジー効果や事業展開の可能性も展望してみる。

上場廃止だが、太陽誘電傘下で生き延びるエルナー

経営逼迫の電機メーカー2社、破綻回避への動きが最終局面…市場が注視の画像2

 エルナーはコンデンサとプリント基板を2本柱としていたが、プリント基板を切り離し、コンデンサの専業体制としたうえで太陽誘電の完全傘下で再出発することを決めた。コンデンサにおいては太陽誘電とシナジーが見込めるが、プリント基板事業は太陽誘電にとっても興味がなく、切り離されたということだろう。この結果、エルナーは今年12月26日付で上場廃止となる。

 さかのぼり、エルナーは2013年12月期に欠損に転落して以来、前17年12月期まで5期連続の赤字だった。前17年12月期末時点では債務超過にまで転落している。その後、今年4月には事業の2本柱のうちのひとつだったプリント基板事業を台湾メーカーに売却して切り離し、さらに太陽誘電を割当先とする増資を実施したこともあり、この時点で債務超過はいったん解消した。

 しかし依然として業務面で改善はみられず、今18年12月期中間決算の当期純利益は33億2500万円の赤字にとどまっている。財務も、中間期末時点での純資産は債務超過ではないものの、2億7100万円しかない。総資産は157億円だから、自己資本比率は1.6%という低水準で、再び債務超過寸前のレベルだった。

 太陽誘電は、エルナーの赤字経営が始まった14年から資本参加しており、今年4月に実施したエルナーの増資を引き受けたことで、それまで22.3%だった持株比率は63.75%となっている。残る株式について、来年1月に株式交換を実施して完全傘下に収めるということになった。

 エルナーは、太陽誘電の完全子会社となり、市場の拡大が見込まれるEV(電気自動車)およびHV(ハイブリッド自動車)を中心とした自動車市場などをターゲットに、電解液と導電性高分子を融合した導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサの増産に注力する。プリント基板事業を切り離し、コンデンサの専業となり上場廃止となるものの、太陽誘電子会社の非上場企業として、なんとか生き延びる道を確保した。

高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役

高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役

業界紙記者を経て2004年に電機業界の情報配信会社、クリアリーフ総研を創業。
雑誌などへの連載も。著書に『エレクトロニクス業界の動向とカラクリがよ~く
わかる本』(秀和システム)、『東芝』(出版文化社、共著)ほか
クリアリーフ総研

Twitter:@clearleafsoken

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