スルガ銀行の取締役選任では賛否が分かれる
シェアハウス融資などで多数の不正があったスルガ銀行の株主総会では、機関投資家は議決権をどう行使したのか。創業家出身の岡野光喜会長や米山明広社長ら11人の取締役選任議案への投票では、機関投資家の間で賛否が分かれた。
6月28日の株主総会でみずほ信託銀行は、岡野氏や米山氏ら9人の取締役選任に反対した。同社のガイドラインは、「不祥事に責任あると認められる取締役の再任または選任に対し、原則として反対する」としている。第一生命保険も「実質的トップである会長の経営責任は重いと判断した」として、岡野氏の選任に反対した。
一方、三菱UFJ信託や三井住友信託、明治安田生命は全員の選任に賛成した。「(6月の株主総会時点で)第三者委員会の報告がされておらず、反対する材料が十分ではなかった」(三菱UFJ信託)などの理由で選任案に賛成したのだという。住友生命はすべて棄権した。
当時、スルガ銀行はシェアハウス向け融資で多数の不正があった問題で、第三者委員会(委員長=中村直人弁護士)を立ち上げ、その調査結果待ちの状態にあった。
機関投資家は不祥事基準を持っているが、組織ぐるみの不正かどうかの全体像が見えなかったため、判断が分かれたようだ。
すべての取締役候補者が賛成多数で選任されたが、賛成率は岡野会長が71.30%、米山社長は71.74%だった。岡野氏の賛成率は前年の91.86%から20.56ポイント下がった。賛成に回ったほかの機関投資家が反対票を投じていたら、過半数割れもあり得た。
三菱UFJとみずほへの株主提案に野村アセットは賛成
機関投資家が株主提案に賛同する傾向が強まった。かつては会社提案に賛成し、株主提案には反対することがほとんどだったが、株主提案へ理解を示す機関投資家が増えている。
機関投資家でもっとも早く開示した野村アセットマネジメントの行動が目を引いた。
「総会に出された株主提案のうち、三菱UFJフィナンシャル・グループやみずほフィナンシャルグループの役員報酬の個別開示を求める議案に対し、賛成票を投じていた。(中略)三菱UFJでは他に、取締役会議長と最高経営責任者(CEO)との分離、政策保有株の議決権行使などを求める定款変更にも賛成した。みずほフィナンシャルグループの総会でも同様の株主提案に賛成した」(7月27日付日本経済新聞)
野村アセットが公表した4~6月に開かれた投資先企業1719社の総会での賛否結果によると、129件の株主提案のうち賛成は15件、反対は114件だった。賛成比率は12%で17年4~6月の同7%から5ポイント上昇した。