6月末までに開かれた株主総会の議案に対する大手信託銀行や生命保険会社などの議決権行使の状況が判明した。
機関投資家は2014年に導入された行動指針(スチュワードシップ・コード)で、投資先に企業価値を高める働きかけをするよう求められ、議決権をどう行使したかを開示するようになった。17年の改訂で個別議案の賛否も公表すべきとされ、議案ごとの議決権の行使状況をオープンにした。なお、信託、生保大手7社中、個別の議決権行使状況を開示したのは、日本生命保険を除く6社だった。
三菱UFJ信託は三菱マテリアルのトップ選任に反対
三菱UFJ信託銀行は、三菱グループの主要企業、三菱マテリアルに関して経営トップなど4人の取締役の選任に反対した。
「三菱UFJ信託銀が三菱マテリアルの総会で反対票を投じたのは、招集通知にあった竹内章社長(当時、現会長)と現社長の小野直樹氏(当時副社長)、副社長、専務の4人の取締役の選任議案。判断理由は『同社の不祥事に関し責任がある』と記した」(8月30日付日本経済新聞)
三菱マテリアルは昨秋以降、子会社5社で次々と不正が発覚。三菱マテリアルは株主総会招集通知を発送した後に、それまで否定してきた本社の不正も発覚。6月11日、竹内章社長の引責辞任と、小野直樹氏の社長昇格を発表した。6月22日、株主総会開催後の取締役会を経て小野氏が社長に正式に就任、竹内氏は会長になった。
鉄の結束を誇る三菱グループとはいえ、身内に「甘い」と見られるような議決権の行使は許されない。機関投資家として責任を追及する姿勢を明確にした。
三菱UFJ信託銀行のホームページには、議決権行使基準が開示されている。取締役の選任については、以下のように不祥事の場合は原則、反対する。
・不祥事の発生により、経営上重大な影響が出ていると判断する場合は、代表取締役の再任に反対。
・不祥事行為に関与または責任があると判断する取締役がいる場合は、その取締役の再任に反対。
・内部管理体制に重大な不備がある等、不祥事行為が取締役会全体の問題であると判断する場合は、全取締役の再任に反対。
この基準に基づいて三菱マテリアルの役員選任について判断、社内取締役4人全員の再任に反対した。
三菱マテリアルが6月26日に関東財務局へ提出した臨時報告書によると、賛成の割合は、竹内章氏(当時社長、現会長)が75.17%、小野直樹氏(当時副社長、現社長)が90.30%、飯田修氏(副社長)が84.27%、鈴木康信氏(専務)が80.28%だった。竹内氏の17年6月の株主総会での賛成率は95.70%だったので、20.53ポイント下落したことになる。
三井住友信託銀行は不祥事基準に基づき、飯田修氏と鈴木康信氏の2人の役員の選任に反対票を投じた。飯田氏と鈴木氏の賛成率が社長になった小野氏を下回ったのは、こうした理由による。