自動車業界は今、「100年に一度の変革期」を迎えている。自動運転、電動化、コネクティッド、シェアリングなど、自動車のあり方を根底から揺るがす大きな変化が起きているからだ。この大変革は、乗用車だけではない。むしろ、商用車のほうが早く進むといわれているのだ。
というのは、トラック業界は深刻なドライバー不足と高齢化を抱えているからだ。2020年には10万人規模のトラックドライバーが不足するという予測さえある。その点、自動運転はトラック業界にとって大援軍である。現にトラックの隊列走行の実証実験があちこちで行われている。
一般的にいって、トラック隊列走行とは、3台、もしくはそれ以上の数の大型トラックが、縦に並んで走行することをいう。先頭車両のみを人間のドライバーが運転し、後続車は先行車を追従走行する仕組みだ。隊列走行は高効率大量輸送の一助となるだけでなく、走行時に後続車両の受ける風の抵抗が軽減され、燃費向上や排ガス削減効果も期待されている。ちなみに、安全を担保するため、現状では後続車も有人で実験が行われている。
国内トラック最大手の日野自動車は、22年ごろをめどに、一部を除いてシステムが運転する「レベル3」の自動運転をトラックに導入し、25年以降に「レベル4」の自動運転トラックを実用化する方針だ。
日野の隊列走行では、車車間通信(V2V)やミリ波レーダーによる加減速の制御のほか、その情報でクルーズコントロールを行う。つまり、先行車がアクセルを踏めば、同じように後続車も加速し、先行車がブレーキを踏めば、後続車も同じタイミングで減速する。パーキングエリアなどから走行車線へ進入するときや、逆に走行車線からパーキングエリアなどへ流出する際には、高精度GPSによるルートマップ等に沿って制御する。
日野の計画によると、隊列走行は23年をめどに有人の先頭車を有人の後続車が追従する「有人隊列走行」、25年をめどに有人の先頭車を無人の後続車が追従する「無人隊列走行」を実現、導入を目指している。
また、日野は今年3月、いすず自動車【編注:「ず」の正式表記は踊り字に】との新技術の共同開発を発表した。バス、トラックなど商用車について、視界支援、路車間通信、加減速支援、プラットホーム正着制御の4つに関する高度運転支援技術・ITS技術を共同開発し、18年度以降のトラックやバスに順次搭載していく計画だ。協調領域では、同業者間で手を結ぶことにより、開発コストを抑えたい考えだ。